今日は16歳ダックスが副甲状腺機能亢進症で来院され、PEIT(経皮的エタノール注入療法)を実施。1.23投稿
(→簡単にいうと副甲状腺に出来た腫瘍をメスを持たずにアルコールを注入して腫瘍を壊そうとする方法。)
「良くある疾患」の項の説明の写しであるが、副甲状腺とは喉あたりにある3ミリ以下の小さい組織で、その働きは主に体のCa、P等のバランスを管理している。これは生体にとって非常に重要である。
代表的なホルモンはパラソルモンでCa(カルシウム)の消化管吸収と骨からの血液への放出を促すホルモンである。
このホルモンの分泌が異常になった結果、それに伴ってカルシウムの異常をきたす状態が副甲状腺の異常である。このホルモンが過剰になってしまった場合が『副甲状腺機能亢進症』、枯渇などにより低下してしまった場合が『副甲状腺機能低下症』と呼ばれている。
原発性副甲状腺機能亢進症は副甲状腺そのものからカルシウムを増やすホルモン(パラソルモン)が出過ぎる状態で原因として最も多いのは高齢犬では腫瘍である。ある統計は犬の副甲状腺機能亢進症のn54頭の集団で腺腫が42頭、過形成9頭、腺癌が3頭であってとされる。この結果を見る限りだと腺腫という良性腫瘍が原因となる事が多いとなる。
診断 : 触診、血液検査、CT、超音波で行われる。
治療 : 内科的治療法(輸液、ステロイド療法、利尿剤、カルシトニン)、外科的切除がある。外科以外にPEIT(経皮的エタノール注入療法)も比較的新しい治療である。
今回の症例は高齢と言うこともあり副甲状腺の摘出は望まれず侵襲の少ないエコーガイド下PEITを希望したため実施した。
→経過は後日載せる予定
【PEITに関連した論文】
PEITに関して、聞き慣れない先生も多いと思うのでいくつか詳細が載せられている論文を載せておく。
Retrospective Evaluation of Three Treatment Methods for Primary Hyperparathyroidism in Dogs.J Am Anim Hosp Assoc 2007;43:70-77.
○副甲状腺摘出術(PTx)47頭
結果
・高カルシウム血症から回復44/47=94%
・残り3頭中1頭は再手術で回復
・奏功期間中央値561日
○Ethanol ablation(PEIT)15頭中18回処置
結果
・高カルシウム血症から13/18で回復=72%
・1頭は2回目処置で回復
・2頭は各2回追加処置→血清Ca値高いまま無効
・奏功期間中央値561日
○heat ablation48頭
結果
・高カルシウム血症から 43/48で回復=90%
・1頭は2回目処置で回復
・2頭は外科で回復
・奏功期間中央値581日
結果
・高カルシウム血症から23/27回で回復=85%