糖尿病とは
自分の血液中の糖の量をコントロールできなくなり血糖が上昇してしまう病気です。
治療はどの治療法がその子の血糖を安定させられるかモニターする必要があります。
糖尿病と診断され在宅で糖尿病をケアする時以下を参考にしてみて下さい。
1️⃣精密検査
まず正確に糖尿病と糖尿病を起こす由来をつきとめるため、動物病院でいくつかの検査を行います。
・血糖値
・尿糖
・糖化アルブミン検査
・ホルモン病の検査
・膵炎の検査
・炎症性疾患の検査
この検査を行うことでインスリン療法が効きやすいかどうか、他の要素から糖尿病を起こしていないか、いつ頃から血糖値が高くなって来ていたかなどを判断します。
2️⃣診断が下されたら次に治療はどのようにしたらよい?
糖尿病には治療初期に入院が必要なものと在宅で開始できるものとに分かれます。
case1:すぐに入院点滴が必要な場合
case2:在宅でインスリン療法で治療が可能な場合
に分かれます。この2つの治療パターンを分ける要素として『ケトン体の有無』と『脱水の有無』があります。
~入院治療~
case1のすぐ入院が必要なケースは主に尿で『ケトン』という成分が検出される場合です。これが消えるまで静脈からインスリンと糖などを合わせた点滴を行って、細胞にどんどんと栄養源である糖を送り糖尿病から生じている身体の飢餓状態を止めます。この点滴を入れずにインスリンを導入するとPやKという血液の成分が激変し非常に危険です。数日間治療を継続しこのケトン体が消えたら在宅インスリン療法に切り替えます。
また上記の『ケトン体』が陰性でも脱水が酷い子はインスリンの効果が不安定になりやすく、細胞が栄養を利用しにくい状態に陥っているために脱水緩和の静脈点滴を入院で行う事もあります。
インスリン療法導入時に血液に不足してくるカリウムやリンという成分を補いながら点滴していきます。
危険因子であるケトン生成や脱水が落ち着いたらcase2の在宅療法に進みます。
~在宅治療~
case2の場合は初期で発見され『ケトン体』も『脱水』もない場合、在宅インスリン療法を指導いたします。
下記のように食事を与えながらインスリンを自宅で皮下注射して一定期間定期的に通院して確認していきます。
Q:そもそもインスリンって何?
A:インスリンはもともと膵臓から作られるホルモンで、血液の糖を細胞にしまい込ませて血糖値を下げるものです。
Q:糖尿病でなんでインスリンを投与しないといけないのか
A:糖尿病は自らのインスリン分泌が低下している型が多く、体外から補充する事で血糖値を下げる必要があります。
Q:血糖値は高いままではいけないの?
A:血糖値が高値が継続すると血液が濃くなり脱水が起き、ヒトでは心筋梗塞、肝硬変や糖尿病由来の糖尿病性腎症、糖尿
病網膜症、糖尿病性神経障害など身体が弱っていきます。動物も同様の疾患を合併するケースを経験しますが特に白内
障が多い印象があります。
Q:なんで250以下にさげるのか?
A:血糖値は350を超えると尿中に尿糖が多くなりそれによって水分も多く尿に持っていかれ『脱水』を起こします。
血糖値は動物種によって違いますがより正常値に近づける方が体の負担も少ないといえます。
Q:インスリン以外下げるホルモンはないの?
A:はい。動物の体は飢餓(低血糖)に対するホルモンはアドレナリン、成長ホルモン、コルチゾール、グルカゴンと豊富
な予備があります。しかし飽食(高血糖)状態には備えが多くなくインスリンの一種でになっております。
Q:どうやって投与するの?
A:現状内服が無いため注射によって一日決まった回数注射器で接種しましょう。
Q:一生続ける必要があるの?
A:その子によってはインスリンが必要なくなるケースがあります。猫で膵機能の回復により不要となるケースがありま
す。原則は継続投与と考えておきましょう。
3️⃣血糖測定器の装着
これは1つの方法ですが、家で血糖値を測定する為に皮膚に機械を装着します。この機械からリーダーに経時的に血糖値のデータを読み込ませるためです(装着に際し機械を装着する部位の毛を剃毛いたします)この機械を装着する利点は
インスリン療法開始時の
・低血糖を予知できる
・インスリンの量の調整を在宅で出来る
・頻繁な採血や傷を負わせずに動物のストレスが少ない状態で血糖値を確認出来る
という点です。
*****在宅療法開始*****
4️⃣食事を与えます
帰宅したら獣医師に指導された糖尿病用のお食事を与えます。写真は一例ですが糖コントロール、m/d、メタボリックス、満腹感サポートなどを良く使います。食べない場合はいつも食べている食事でも構いません。安定して食べてくれる食事の方がインスリン療法がおこないやすいと思います。また他の病気を併発(膵炎、腎不全など)している場合はそれらの療法食を優先し与えましょう。
[食事の選び方のポイント]※総合栄養食にしましょう。
・他の病気がある場合はそれを優先
⇩
・他の病気がない場合、よく食べる食事優先
⇩
・なんでも食べる子は糖尿病専用食お勧め。
5️⃣インスリンの注射
インスリンの皮下注射を行います。食べたのを見届けてから獣医師に指示された量のインスリンを注射しましょう。この時、ご飯の食べたグラム数をメモしておきましょう。
インスリン療法にはいくつかの製剤があります。
犬で良く用いられるインスリン製剤
・ランタス・・・基本一日一回投与で作用ピークが12時間
・ノボリンN・・一日2回投与。12時間の作用持続、作用ピークが6時間
・ノボリンR・・速攻性で主に入院中のコントロールに用います。
猫で良く用いられるインスリン製剤
・プロジンク・・一日二回投与。12-18時間の作用持続、作用ピークが5時間。
・ランタス・・・作用時間24時間、ピークなし。一定の効果で維持するタイプ。
・レベミル・・・作用時間6-10時間、急激な上昇を止めるのにむいている
・トレシーバ・・作用時間24時間、ピークなし。一定の効果で維持するタイプ
投与量(これはあくまで目安)
・食前350mg/dl以上の場合は0.5-1単位/kg
・食前350mg/dl以下の場合は0.25単位/kg
※個体差が大きいため担当する獣医師に必ず確認してください。またインスリン製剤によって推奨量が上記と異なりますの
で目安と考えて下さい。
投与回数
・注射製剤の種類による。
7️⃣インスリンの投与量を調整
獣医師の指導の下、食事を与えインスリンを正確に注射出来ていても血糖値は高い場合、次の食事の時、微量ですが注射器1メモリづつ徐々に増やしていきます。インスリン療法時の高血糖のポイントは
・正確に接種できている状態での高血糖か
・食前の血糖値がいくつか(食前も高血糖か)
・食べている量は毎回一定か
です。これらが満たされていない場合は急に増やさず獣医師に相談しましょう。
8⃣定期診察で獣医師に相談、経過報告
帰宅してから測定した血糖値をもとに獣医師に毎回の食事量と注射の単位数と食べた時間と打った時間を相談しましょう。リーダーに残してあるデータは消えてしまう事もあり得ますのでノートにメモして記録として残しておきましょう。
主に獣医師が知りたい点はどのくらいのご飯を食べて何単位打ったらどのくらい下がったかです。これを元に設定単位数を決めていくこととなります。またその効果によっては製剤そのものの変更を提案する事もあります。
注意点:
*インスリン療法を実施する上で投与するインスリン量は食事量と密接な関係にあります。与える食事の種類と量は可能な限り固定しましょう。
*血糖測定器は身体を引っ張り上げるように抱っこをしたり皮を引っ張ると皮に入っている機械の針がズレて使えなくなってしまう事があります。なるべく身体に無理な力を加えないように生活させましょう。
*血糖測定器はケージの網で身体を擦り付ける習性があると取れてしまう事もあります。そのような習慣のある子は対策を練りましょう。
*インスリンを皮下注射する部位は同じ場所が良いです。ただし特別な事情がある場合は異なる部位に接種してもかまいません。その場合ノートに記載して分かるようにしておきましょう。
もし低血糖になったら
対応が遅れると命に係わる事があるため動物病院を受診しましょう。
搬送までの応急対策として自宅での対処法をあげておきます。
①意識がはっきりしている場合
・砂糖水(100mlに対し砂糖25-50g溶かしたもの)を0.5ml/体重の量を歯茎に塗り付けましょう。もしぺろぺろと舐める様であれば率先してのめせましょう。これを一時間に二回以上×インスリン作用時間の間続けます。
・食欲がありそうであれば砂糖水のあとチューブ状のおやつや食事を与えましょう。
②意識がない場合
・砂糖水(100mlに対し砂糖25-50g溶かしたもの)を0.5ml/体重の量を歯茎に塗り付けながら動物病院に搬送し、静脈から糖を入れてもらいましょう。