【壊死性白質脳炎とは?】
壊死性白質脳炎は,ヨークシャー・テリアの壊死性脳炎として報告されていたが、ほかの犬種にも発生し,また壊死性髄膜脳炎のなかでも特徴的な面があり、病名として壊死性白質脳炎のほうがより適切な表現であると提唱されてきました。壊死性白質脳炎は1993年に報告されたのが初めてで、以降多数の症例が報告されています。病変は,報告されているすべての症例のうち1例を除いて,大脳および脳幹に存在します。壊死性白質脳炎は病変が主に大脳皮質の内側にある白質という部位に存在することが重要な特徴であり,大脳に病変がほほ限局する壊死性髄膜脳炎とはこの点で一線を画します。
【発生年齢】
平均発生年齢はおよそ4.5歳齢(1〜10歳齢)です。
【性別】
性別および避妊去勢の有無による差は認められていません。
【経過】
病態経過は非常に変化に富んでおり,たいていはゆっくりと徐々に進むケースが多いです。
【症状】
この疾患は一般的に病変が出来た部位に反映した症状が現れます。
NLEは前脳(大脳または視床)および脳幹のに病巣を作りますので症状はそこの固有の症状が出ることが多いです。多いものとして精神状態の変化、視覚喪失、中枢性の前庭症状、固有位置感覚 (プロプリオセプション)およびホッピング(跳び直り反応)の消失,発作などがあります。
【診断】
確定診断はおかされた脳組織の病理組織学的診断によって下されますが、生前に実施することは不可能ではありませんがあまり現実的ではありません。
実際は仮診断として脳脊髄液(CSF)検査、MRI検査が行われます。
脳脊髄液検査ではNLEは中程度の細胞数の増加が認められ,その多くが単核細胞(マクロファージ,単球,リンパ球,形質細胞)であり,また軽度~中程度のタンパク濃度の上昇などの結果が得らます。
MRIで病変が存在する領域の
・T1強調画像においては低信号
・T2強調画像においては高信号
・造影剤の静脈内投与後は軽度に造影されます。T1強調画像およびT2強調画像の特徴は脳脊髄液と同程度の信号強度という点である。
・FLAIR像では病変は高信号であり,タンパク濃度が脳脊髄液に比べて高いことが影響しているようである。
病理組織検査では,病変は大脳および視床の白質深層に好発する。通常、白質の半卵円中心,視床皮質線維,内包,視床が罹患する。疾患の重症度や進行度にもよるが、壊死部位が融合し,さまざまな大きさの空洞を形成する。白質では,腫大して壊死した多数の神経軸索,大円形細胞,格子状細胞(神経組織のマクロファージ),反応性ミクログリア(小屋細胞)が認められ,ときおり囲管性浸潤がみられる。軟膜病変は一般に非常に軽度であるが,少数のリンパ球および形質細胞の浸潤が認められることがある。灰白質内の神経細胞は,周囲に炎症があるにもかかわらず,その影響を受けないようである。これらの特異的な違いにより,壊死性髄膜炎とは識別され、学名の変更が試みられている。