GME(肉芽腫性髄膜脳脊髄炎)

【GMEとは?】


GMEとは犬の脳神経系に発生する原因不明の非化膿性炎症性疾患です。つまり脳や脊髄に感染ではないタイプの謎の炎症が出来る病気です。


1962年、KoestnerとZemanにより『細網内皮症』と名付けられ、1978年にBraundらによりGMEの名前が提唱されて改名されました。


原因不明の髄膜脳炎または髄膜脳脊髄炎はこれまでGME(肉芽腫性髄膜脳脊髄炎)、MME(壊死性髄膜脳炎)、NLE(壊死性白質脳炎)と分類され神経科では扱われてきた。しかしながら複数の病型を呈する犬や、またはいずれの病型にも分類しがたい犬も少なくなく、近年はMUO(由来不明の髄膜脳炎)と括られ扱われる傾向にある。


以下に紹介するものはかつてGMEと分類されていた特発性髄膜脳炎または髄膜脳脊髄炎の説明をご紹介いたします。




発生率は脳神経系の5-25%を占める頻度とされております。


脳内での発生は主に『白質』に多く、『灰白質や軟膜』にも生じる場合があります(検査所見書に白質とか灰白質と書いてあると思いますがこれは脳のどの部位かを表してます)。



【原因は?】

免疫細胞の分布、免疫抑制剤への反応などから免疫介在の機序によるものと考えられています。

 

【発生部位は?】

病変がある場所によって3つのタイプに分類されております。

・播種型

・巣状型

・眼型


播種型は主に大脳、脳幹の尾側、小脳、頸椎の白質に病変を形成しますが、灰白質、軟膜、脈絡そうにも病変を作ることがあります。視神経、前脳、小脳、脳幹、脊髄、髄膜のうち少なくとも2つのエリアがおかされる場合、播種型と診断されます。


巣状はいくつかの病変が融合したタイプで脳幹(橋や延髄)に多く、大脳白質にも認められます。主に病変は単独の占拠性病変(コブのようなイメージ)です。


眼型は網膜から視神経に形成されます。



【犬種】

小型犬のトイ犬種やテリアなか多い傾向とされてきましたがどの犬種にも認められます。


【年齢と性別】

若齢から中年齢(平均5歳齢で生後6ヶ月〜12歳)が多く、性別差は研究により結果が異なります。


【症状】

病変が出来てしまった場所により症状はまちまちです。通常前脳に病変ができると痙攣発作、行動の変化、運動失調、旋回運動、徘徊、頭部押し付け、視野障害が認められます。

病変が中脳に及ぶと抑うつ、視覚は正常ですが瞳孔の光に対する反応が鈍り開いたままになったりします。

病変が橋や延髄に及ぶと片側性麻痺〜四肢麻痺、眼瞼反射や角膜反射や咽頭反射といったいくつかの脳神経の障害、顔面神経麻痺や三叉神経麻痺、中枢性前庭障害が見られます。

小脳に及ぶとガチョウ様歩行、企図振戦などが見られます。

目の場合、視覚障害が主です。光への反応がない瞳孔散大を伴う急性視覚障害が起こります。


【どうやって診断するか】

血液検査、神経学的検査法、眼科検査、MRI、脳脊髄液検査、血清学的検査を実施します。

※確定診断には脳生検が必要となります。

◉血液検査

 内臓の異常による脳の異常がないかの検査です。

◉血清学的検査

 ・原虫(ネオスパラ症、トキソプラズマ症)

 ・カビ

 ・ウイルス(犬ジステンパーウイルス)

◉MRI

 ・T2高信号

 ・FLAIR高信号

 ・T1低信号〜等信号

◉脳脊髄液検査

 ・細胞解析(有核細胞数増加:pleocytosis)

  ・小リンパ球数(60-90%)

  ・単球数(10-20%)

 ・タンパク濃度25mg/dl以上で40-400が多い

 ・犬ジステンパーウイルス中和抗体陰性


【治療法は?】

上記の通りGMEは現在MUOと括られ免疫介在によるものの可能性からステロイド剤+免疫抑制剤、治療反応により放射線療法の介入、痙攣の有無により抗てんかん薬療法を合わせて併用します。

1️⃣ステロイド療法

 免疫抑制量のステロイドを1日1回で開始し、反応により2週間毎に減らし0.5〜1mg/kg 1日1回で維持します。

2️⃣放射線療法

 6-8Gy


3️⃣免疫抑制剤療法 

 ・アトピカ

 ・アラバ

 ・キロサイド

 ・セルセプト

 ・プロカルバジン


4️⃣抗てんかん薬療法

 ・コンセーブ、エピレス

 ・フェノバール

 ・イーケプラ

 ・臭化カリウム


  

【予後は?】

     MUOは病型によって経過が異なります。一般にNMEは治療反応が良くなく短期で死亡してしまう事もあります。それに対してGMEとNLEは治療反応が良く長期維持治療によって生存する確率が高いです。