重症筋無力症

神経筋接合部疾患(NMJ:neuromuscular junction)抗体産生に関連しない先天型(受容体そのものが少ない)とアセチルコリンレセプターに対して抗体が産生された後天型の二つがある。
先天性は犬でスムースヘアードフォックステリア、スプリンガースパニエル、サモエド、ジャックラッセルテリア、猫ではシャムネコ。猫の先天性は通常6ヶ月未満で発症する。運動不耐症、挿間的筋力低下(短時間にたびたび症状が出る)
後天性は分かってないが様々な腫瘍(胸腺腫、胆嚢癌、骨肉腫など)に続発して発生。腫瘍とNMJの共通抗原が原因とされる。猫では後天性はアビとソマリが多い。


全身性で筋力が低下し歩幅が短くなる。後弯姿勢。悲しげな表情、流涎、尾はしばしば挙上を維持している。
局所性で巨大食道のみ。咽頭部の筋群が侵されるゼイメイ、上部気道吸気困難。

猫で、歩くとばたりと座位または伏臥位で休息しだす。休息をとると症状は改善する。硬直した竹馬様歩行が筋力低下に先行してみられる。眼瞼反射の低下や眼瞼裂の狭小化。巨大食道は非常に稀。

診断
・テンシロンedrophonium検査
 テンシロンは抗コリンエステラーゼでありを投与することによりNMJにアセチルコリンを増加させる。犬0.1-0.2mg/kg、猫0.25-0.5mg/cat。
実施に際しては呼吸筋の筋力低下を起こすことがあるので必ず気管チューブとベンチの準備をしておくこと。
欠点は特有ではなく他の下位運動ニューロン性疾患も改善するから分からないことがある。
副作用:ムスカリン受容体刺激や筋力低下の症状の増悪。唾液分泌、排尿排便の増加。

・抗アセチルコリンr抗体検査
 後天性でのみ有効で最も優れた検査。偽陰性は後天性では稀。先天性では抗体は存在しない。

治療
①抗コリンエステラーゼ
先天性、後天性いずれも長時間作用型抗コリンエステラーゼ(ピリドスチグミン:pyridostigmine)0.5-3mg/kg q8-12h PO。開始は低用量で効果が出るまで増量。猫は犬より感受性が高いのでより低用量で開始した方が良い。

副作用:流涎、多尿、多排便、虚弱。
→コレらがみられたらピリドスチグミンが少なすぎるかor多すぎる。→テンシロン(edrophonium)検査をしてみる。反応(改善)があったならピリドスチグミンを増量してみる。→テンシロンで悪化したらピリドスチグミンによる毒性と捉えピリドスチグミンを減量するべき。  

②ステロイド(後天性の場合なら)
コルチコステロイド1-2mg/kg BID免疫抑制量。
他の免疫介在性疾患にも効果がある。
低用量から開始し、1-3weeks見てみる。どの用量が効くか最低用量を探す。症例によっては重症筋無力症の症状が消失し、ステロイドを中止できる例もある。

③巨大食道の薬剤療法
・メトクロプラミド
・高い位置からの給餌

④誤嚥性肺炎の薬物療法
・BALに基づいた抗生剤療法
・酸素吸入
・噴霧療法
・coupage

治療反応と予後
反応は犬の方が猫より良い。