7歳11ヶ月のイタリアングレーハウンドがベットから飛び降り10分間痙攣発作のような足を突っ張ったまま立てなくなる状態になったことを主訴に来院。
神経学的検査法、画像診断、血液検査から低カルシウム血症(ALB3.2g/dl.Ca8.1mg/dl.P1.8mg/dl)が確認された。この症例においては血中Ca濃度の低下は重度ではないものの鑑別が必要と評価し上皮小体機能確認のためイオン化Ca、intactPTHを実施いたしました。
結果イオン化Ca1.13mmol/L(犬基準値1.24-1.56)、intactPTH2.2pg/ml(犬基準値8-35)であったことから原発性上皮小体機能低下症の可能性と診断しました。
治療としてカルシトリオール0.025-0.04μg/kg、沈降炭酸カルシウム70-180mg/kg/日を処方し、カルシウム濃度が安定したのちカルシトリオールのみの投与にして経過を見ている。
カルシトリオールおよびカルシウム製剤投与後、2年経過するが痙攣様の異常は一度も出ていない。
ビタミンD製剤の選択は変換の必要性を重点として考えると良い。腎不全がある症例ではカルシトリオールや1.25(OH)2D類似体を選択する。腎不全がなければ変換出来るためコレカルシフェロールの様な変換が必要な薬でも良い。
臨床において低カルシウム血症は遭遇することが割とあるものであるが、よくあるものの鑑別診断として
・原発性上皮小体低下症
・栄養性上皮小体低下症
・急性膵炎
・腎不全
・低Mg血症
・テタニー
・エチレングリコール中毒
・リンの投与
・腫瘍溶解症候群
・低アルブミン血症
などがあり、全て鑑別の上診断する。