救急勤務時代に来院された症例。呼吸速拍、起立不能を主訴に来院された8歳犬ミックスの胸部レントゲンです。心臓は拡張し気管支を背側へ圧迫しています。聴診で心音に異常がありレントゲンと心臓エコーを実施した結果、心臓周囲に液体が1㎝幅で貯留し、心臓の動きを圧迫していたために心タンポナーゼと診断し、心嚢膜穿刺を行い心臓の周囲の液体を排液し、呼吸状態も改善し、元気になりました。回収した液体の細胞診で腫瘍細胞がみられ、腹部超音波画像診断で肝臓内低エコー領域がみられたため肝臓バイオプシーを行ったところ肝臓腫瘍が見られました。
パグ10歳。1週間前からせき込む、元気がないを主訴に来院され、当院獣医師より治療依頼をうける。全身状態は、聴診から心音が確認されず、頸静脈怒張、脈圧低下と典型的3徴が確認された。胸部レントゲン所見では気管支が背側に挙上されており、ECGにてQRS群の低電位(1mV以下)、頻脈が確認された。心臓超音波検査からEFS(超音波フリースペース『別名:PeriEff』)が確認されたため心嚢内液体貯留と診断し、鎮静下で肋軟骨結合部(第5~6肋間)からエコーガイド下心嚢穿刺を行い45ml程の血様心嚢液を採取した。麻酔覚醒後は舌血色もよく、発咳も消失した。心嚢液の細胞診断では腫瘍様細胞は検出されず、穿刺後のレントゲン所見と穿刺前レントゲン所見の比較、穿刺後の超音波画像診断所見で右心房拡張が見られた事、および犬種を考慮し、大動脈小体腫瘍の可能性も考えられたため、CTを追加検査することとした。
シーズ13歳が食欲低下、呼吸が早いという主訴で来院されました。鼻から液体が出ており、聴診で心雑音が聴取されたことから、心不全に併発した肺水腫の可能性を考慮し検査前に利尿剤を投与し、レントゲンを行った。結果、左レントゲン写真のように重度の心肥大とそれに伴う気管支挙上、肺水腫が見られました。その後利尿剤およびACE阻害薬およびピモベンダンによる治療を行いました。
上記から一週間後のレントゲン。上写真に比し胸部の白いモヤモヤ(肺のむくみ)が消失し、また心臓の異常拡張が抑えられ気管支が正常な位置に戻り始めている事がわかります。
高血圧症は人だけではなく犬猫にも多くみられます。原因により肥満や加齢や遺伝に関連した本態性高血圧、内臓やホルモンが引き起こす二次性高血圧に分かれます。
人では年齢や合併症によりその基準は多少異なりますが、一般的には収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上の状態を指します。
動物での治療開始の目安は①収縮期血圧160mmHg以上+標的臓器障害(眼底の出血や脳出血など)があるか、②収縮期が180以上が2週間2回の検査で引っかかる場合、③8週間以内の二回の血圧検査で収縮期が160以上+二次性高血圧(甲状腺機能亢進や副腎疾患、腎疾患、末端肥大症など)が確認できる場合である。
※収縮期160以下で臓器障害がない場合は経過観察をします(3ー6ヶ月検診)
この子は突然のフラフラと眼の揺れで来院された子で視力を失っていたので神経症状の成り立ちとで高血圧症を疑いました。暗室にした検査室で目にライトを当てると目が部分的に赤い事がわかります。これは眼底出血由来のものでした。もっと長生きしてほしいため飼い主さんに治療をお勧めし開始しました。猫の高血圧症は第一選択としてアムロジン、第二選択テルミサルタンで蛋白尿の有無で判断しても良いと思います。
また犬では第一選択はテルミサルタンやACE阻害薬、第二選択がアムロジンです。
人同様高齢化の時代、高血圧持ちだと脳卒中や心筋障害、心不全、腎不全などを引き起こします。血圧も入念に見てあげてくださいね。