今後、ウサギにおける代表的疾患であるスナッフル、ウサギの前庭疾患、毛玉症、不正咬合などを順次掲載を予定している2020.8

不正咬合

切歯(前歯)の噛み合わせが悪くなる最大の原因は外傷で良くあるのはケージを齧り引っ張ったり、外傷後に舌の圧で下顎の前歯が前に出てしまったりする。
一旦これになってしまうと上手く摩耗できず変な方向に伸びてしまう。
治療はマイクロエンジンでダイアモンドディスクを装着して舌や唇を怪我させないように配慮しながら適した長さに定期的にカットする。小切歯は軟部組織近いので無理せずロンジュールでカットでよい。

ウサギの蟯虫

ウサギの健康診断で意外と引っかかる事のある便に付着した蟯虫。基本共生しているのですが、希望される場合はIVM200μg/kgを10日毎に飲ませるか皮下注射します。もしなかったらパモ酸ピランテル12.5mg/kg 1回内服もしくはフェンベンダゾール100mg/kg飲ませ必要に応じて2週間後再投与します。

ウサギのトレポネーマ症

鼻や外陰部、目の周りにカサブタ様のものがついていゆといらっしゃった幼ウサギさん、病変からウサギ皮膚トレポネーマ症も疑われたためCP55mg/kg1日2回4週間継続し改善した。またカサブタの顕微鏡検査で皮膚ツメダニも検出されたので同時に駆除した(ツメダニは痒みとカサブタ、ズツキダニは痒みだけが多い)。
またCPに反応が見られなかったら皮膚糸状菌がないか真菌培養してみましょう。

腸管鬱滞

割と頻度の多い病気の一つが消化管運動障害。この子は2歳で元気食欲なく、便も出ないと来院。

左の写真のオレンジ矢印で示したお腹の中の黒い部位はすべてたまったガスです。

何らかの原因でお腹が止まり菌が過剰発酵を起こしPHを下げガスが溜まりさらに運動性を失ってしまう状態に陥ってしまっていることがわかります。腸毒素血症という腸の菌が作り出した毒ガス毒素が体内をめぐると命に係わる大変危険な状態です。

症状から消化管機能障害が疑われたため迅速に画像診断と血液検査を行い、点滴、消化管機能改善薬、全身的抗生物質療法、食欲増進剤、強制給餌等の治療に入りました。

内科治療5日後消化管のガスは消失し食欲も改善し元の生活を送れるようになりました。

 

この病気は様々な病態の総称で毛玉のケア、ストレスによる腸内菌バランスの変化からPHの変化が起こることに関係していることも多いため、多角的な対策を練りましょう。

ガスがなかなか減らないときはシメチコンというお薬を20-40mg/body一日三回飲ませながらお腹のマッサージ、強制給餌を実施すると良いです。

 

 


前庭疾患

12歳のウサギが1週間前からまっすぐ立てず身体が捻れる事を主訴に来院されました。
症状を確認したところ斜頸などの前庭疾患所見がみられました。平衡感覚を司る神経に病気が生じてしまう病気です。
この病気は多くはエンセファリトゾーンE.cuniculiが原因となり、脳に肉芽腫性の髄膜炎を起こす事に起因すると言われ胎生期に母子感染が起きていて潜伏していると考えられています。
また細菌性などの外耳炎から同様の症状を表すこともあるので診断を入念に行う必要があります。
この病気は突然発症し、体が捻れ斜頸を起こすケースが多いですが、程度はまちまちです。問題は食事が食べにくくなったりお腹の動きが悪くなりガスが溜まったりするリスクが高いため注意が必要です。
血液中の抗体価検査や画像診断を参考に診断を進めていきます。
治療は細菌感染に対しオフロキサシン15-40mg/kg 1日1回、エンセファリトゾーンE.cuniculiに対してはフェンベンダゾール20mg/kg 1日1回 3週間をベースとします。また状況により食欲不振の子には塩酸シプロヘプタジン0.4mg/kg 1日2回を食欲増進剤としてまたは塩酸メトクロプラミド1mg/kg 1日2回処方すると良いでしょう。
改善には個体差があり、早い子では1週間〜半年と差が大きいです。また再発は起こしやすい病気なので症状が見つかったらすぐに治療を始めましょう。


この子は治療2週間で捻れの消失、3週間目に支えながらの起立が可能になりました。

コクシジウム症

生後3ヶ月の子ウサギが3日続く下痢で来院されました。
子ウサギの下痢は感染性や環境性が多く、まず寄生虫性のものがないか検便を行います。
検査結果コクシジウムという消化管内原虫が大量に見つかりました。
ウサギコクシジウムは11種類ほどあり、その種により病原性の程度が異なります。特にEimeria.irresidua、E.magnaが注意が必要です。顕微鏡による種類の特定は実は困難であり、スルファジメトキシン15-25mg/kg 1日1回、またはスルファモノメトキシン50mg/kg 1日1回を3週間程度投与する。ST30mg/kg 1日2回も有効です。
子ウサギの下痢と食欲不振はセットであることが多く、腸毒素血症や脱水などにより命に関わるリスクがあるため、強制給餌と点滴などのケアを必須とします。

胸腺腫

準備中

毛球症

ウサギの糞が小さくなり、食欲が低下し、またはこの写真のように便に毛が混じるようになったらまず毛球症を疑って治療してみましょう。
一般にウサギの毛球症の内科的治療は
①消化機能改善薬
②強制給餌
③水和
④ラキサトーンなどによる潤滑剤治療
を用います。


ウサギの皮下膿瘍

顎の下に腫瘍が出来たことを心配されて来院された1歳半のウサギ。
部位から下顎の根尖膿瘍が疑われたため、腫瘍などの鑑別のためにレントゲンと細胞診を実施。
レントゲンを顔の側面および少し頭を傾げさせて撮り顎骨から歯が抜け出ていないか確認しました。
細胞診兼穿刺すると乾酪様物質が出てきたため膿瘍の診断として細菌培養(主にパスツレラ症がないか)を行い、切皮して膿を排膿し、傷がしばらく塞がらない様に小さいガーゼをつめて、ゲンタシンそのガーゼに含ませる様に処方。また内服としてニューキノロン系抗生剤を処方して経過を見ている。

エンセファリトゾーン由来の水晶体破砕性ぶどう膜炎

ネザーランドドワーフ4歳が1ヶ月前に目の異常をお家で発見されて来院されました。 
ご自宅で1ヶ月間経過を観察されていたところ次第に異常が進んできたとのことでした。

診察室で確認したところ右眼の眼内に白濁があり虹彩膿瘍と白内障がみられました。眼圧検査は右眼15mmHg、左眼18mmHgで正常な範囲でした。眼球超音波検査では異常のある右眼のみ水晶体の軽度膨化がみられました。

虹彩に形成された膿瘍および白内障からエンセファリトゾーンによる水晶体破砕性ぶどう膜炎と白内障と診断し、エンセファリトゾーン抗体価測定を行いながらフェンベンダゾールとジクロードにより維持治療を開始しました。※ウサギのエンセファリトゾーンなら抗体価検査は確定診断に至るものでなくあくまで診断の一助としての参考的検査として行う事が多い。


この疾患は進行の仕方は個体差があり、一般的には侵襲性の低いジクロードなどの消炎鎮痛点眼や抗原虫薬による内科的治療が行われますが、白内障の進行や膿瘍の管理が困難な場合や進行が早く問題を生じる場合はやむを得ず外科的治療(眼球摘出術)が必要となる事もあります。