救急勤務時代に治療した症例です。日本猫4歳が呼吸困難で緊急来院されました。レントゲンと超音波画像診断から猫喘息性の肺葉が変性している事が確認されました。Priority Careとして消炎剤療法などを行い安定いたしました。
17歳mix猫が開口呼吸を伴う呼吸困難で来院された。近医で原因不明の呼吸器疾患と診断され、ステロイドと気管支拡張剤で1カ月程治療を受けてきた。
呼吸様式があまりにも危険なため、酸素マスクにて安定させ、聴打診を実施したところ胸水をうたがう所見であったため、超音波画像診断を実施した。 写真は呼吸が安定して立てる状態になってから撮影したもの。
胸部超音波画像所見。左図の黒いエリアが液体貯留しているエリア。
緊急超音波ガイド下胸腔穿刺術を実施した。
胸腔穿刺術によって回収された胸水。桃白色で胸水性状検査でSG1.026、TP2.6、Glu127、TG333、細菌培養(ー)、FIP遺伝子検査(ー)、細胞診(-)で『乳靡胸』と診断した。
上記のような緊急処置を講じたあと、呼吸状態の安定が得られたため原因疾患を突き止めるべく下記の検査を実施した。
胸部超音波画像診断により、両心房鬱血が重度であり+心室の求心性肥大が顕著であったため『肥大型心筋症』と診断した。LA/Aoは1.5であった。
腹部超音波画像診断で、腎臓周囲に中度液体貯留がみられ『腎周囲のう胞』と診断した。
処置と同時に行った問診から甲状腺疾患が疑われたため、頸部超音波画像診断および甲状腺ホルモン検査を実施した。超音波では左側甲状腺が中度腫大しており、甲状腺ホルモン検査ではTSH0.02(基準値0.03~0.28)、T4が9.5(0.6~3.9)、fT4が6以上(基準値0.6~2.1)であった。以上の事から『甲状腺機能亢進症』と診断した。
甲状腺摘出術、胸部ドレーン設置術、胸管結紮術等の方法を提示したが、非常に高齢であることもあり全身バイタル安定までの期間、心疾患に対し『β遮断薬+Caチャネルブロッカー+ACE遮断薬併用療法』、甲状腺疾患に対し『メルカゾール内服』、乳靡胸に対し『胸腔穿刺術』を実施した。
治療開始3週間後。まだ痩せていて被毛が粗い
治療開始1カ月半。体重も順調に増え、胸水貯留も無くなった。鳴いた直後の顔
4日前に野外猫を保護したオーナーが保護した猫二匹の鼻水と眼ヤニがひどいため来院された。重度の痩せに膿性鼻水、結膜炎および膿性眼汁がみとめられた。 トブラマイシン抗生物質点眼薬およびIFN点眼を一日2回実施し、栄養管理を徹底指導した。
一週間後の再診時。初診時みられた症状は消失し、元気に成長してきている。
春先から咳をするようになり、半年経過時点で呼吸異常が発現したと来院されたロシアンブルー16歳。来院時、努力性呼吸を呈しており、胸部打診にて共鳴音減弱が確認されたため胸部超音波画像診断を実施。『胸水症』と診断し、胸腔穿刺術を実施した。
胸水性状検査を実施。外観は低粘性の半透明淡黄色であり比重は1.048、TP5.8、LDH800、TG70、Glu132であった。胸水中細胞数は23500cell/μlであった。専門機関へ細胞診を依頼したところ『変性性好中球およびマクロファージ主体』という結果であった。これらおよび臨床所見も考慮し、『漿液線維素性胸膜炎を疑う』と仮診断し、咽頭部および胸水のウイルスの有無をウイルスPCRを実施。また念のため実施した細菌培養検査は陰性であった。次に固形腫瘍の有無を確認するためレントゲン画像診断およびCTを実施した。
胸部レントゲン診断所見。右側胸膜に限極する胸腔内不透過陰影が確認できる。
16歳ミニチュアダックスフントが昨晩から咳込み咳が止まらなくなり来院。
来院時チアノーゼ、努力性呼吸、流涎を呈し、呼吸状態が危機的状態であったためサクションによる口腔内吸引および点滴ルートの確保、ICUにて酸素化を実施。
血液検査にて白血球増加、CRP上昇、胸部レントゲン画像診断の結果から誤嚥性肺炎を疑い胃酸分泌抑制剤(ファモチジン)、制吐剤(マロピタント)、抗生物質(セファゾリン)、
を静脈投与および気管支拡張剤(ネオフィリン)を投与しICU呼吸モニターしなが体温測定+O2濃度測定+経時的血液検査を行い治療を行った。
入院中は薬剤感受性試験に基づいた抗生物質多剤併用療法、制吐剤療法、静脈点滴による輸液療法、ICU酸素管理を実施した。
治療開始5日目
呼吸状態は回復しレントゲンが画像診断においても肺炎所見は消失した。
血液検査も白血球およびCRPも正常値に回復した。