嘔吐を主訴に来院されたフレンチブル♂4歳。以前より嘔吐で動物病院受診歴があり、嘔吐より吐出(食後まもなく吐く)が多いという話だったため食道疾患を疑いレントゲンを撮った。食道拡張が確認された。巨大食道症は他の原因に併発して起こることが少なくないため、詳細検査を勧め重症筋無力症や甲状腺機能低下症、自己免疫性疾患、自律神経疾患、副腎疾患、脊椎疾患等を精査。異常ないため内視鏡検査を実施したが特記所見は見られなかったためバルーン食道拡張術と逆流性食道炎治療を行った。
避妊手術を希望せれ来院された猫ちゃん。問診をとっていると食生活に食道病変を疑う話があったため、避妊手術を延期してもらい胃食道造影検査を実施。食道から胃にかけての境界の締まりに問題があり、元来お腹にある胃の一部が胸の中に出てきてしまう病気であることが分かった。手術における整復を実施
他院から腫瘍摘出の依頼で手術に臨んだ12歳シェルティー。術後2日で重症膵炎を発症しました。蛋白分解酵素阻害薬療法、鎮痛薬療法、抗生物質療法を施しましたが悪化する一方でした。術後膵炎は経過に注意が必要であり、一定期間絶食が必要であるためCVC(中心静脈カテーテル術・・頸の太い血管から心臓あたりまでカテーテルを挿入する治療法。血管が太い部位であるため高濃度点滴に耐えうる治療法)を完全静脈栄養を行いました。
麻酔導入下で頸部に切開をいれます。そして頸静脈を露出させます。
露出させた頸静脈に中心静脈カテーテルを留置し、心臓手前まで慎重に探査しながら進めます。 この時、カテーテル先端は胸部へ達しているためカテーテル操作は慎重に行わなくてはなりません。かつ完璧な滅菌状態である必要もあります。
切開した皮膚および下組織を完全に縫合します。 この後、レントゲンでカテーテル先端の位置を確認し、微調整を加えます。
内頸静脈CVCカテーテルのレントゲン写真
術後無痛のため神経ブロックを施し、外部を固定します。
中心静脈から治療薬と高濃度栄養点滴を入れることによって本来の元気な表情に戻って、立ち上がれるようになりました。しっぽを振ってくれました。現在一週間の入院を予定しております。毎日面会に来てくれる大好きなお母さんと、一日一回の散歩を励みに入院生活を送っています。
治療開始3週間後、無事元気になり退院。
健康診断で実施した腹部超音波画像診断にて偶然発見された胆石。
四か月間吐き気を繰り返し、近所の動物病院で治療していたMIX犬3才が転院してきた。症状から慢性膵炎を疑い、CPL(犬膵特異性リパーゼ)、血液検査、超音波画像診断を行い、CPL487(基準値>200)と高値であったため、内視鏡検査とレントゲン造影検査に先立ち、タンパク分解酵素阻害薬療法+消化酵素剤療法+抗生物質+H2ブロッカー療法を行った。投薬開始後、嘔吐は完全に消失した。3週間後、嘔吐が出始めたため再CPL検査を実施しCPLが基準値範囲であることを確認後、レントゲン造影検査および内視鏡下組織生検を実施した。
内視鏡写真1:食道入り口
内視鏡写真2:食道中央部
内視鏡写真3:胃噴門部
内視鏡写真4:胃底部
内視鏡写真5:胃小弯部
内視鏡写真6:幽門洞
内視鏡写真7:幽門部
内視鏡写真8:小腸(十二指腸)
内視鏡写真9:小腸(空腸)
連日の下痢、嘔吐で来院した柴犬ミックス(6歳)の腹部超音波画像診断所見。小腸が蛇行している。このような消化管がウネウネしてしまうものは主に消化管の虚血性の運動障害でそれによって消化管が痙攣し、運動していない状態である。超音波用語では『コルゲートサイン』と呼ばれ膵炎等の’’痛み’’で好発する。静脈点滴で抗コリン剤による消化管攣縮解除を行うとともに、膵臓疾患治療薬である蛋白分解酵素阻害薬を投与した。血液検査では膵臓特異性リパーゼの上昇が確認され、急性膵炎である可能性を示唆した
救急時代の症例で、M.DAX6歳でまだ加熱処理していないパンイーストを食べ急性胃拡張に陥り、血圧低下、上腹部膨張で来院された。レントゲン後、壊死部に対する緊急胃切開、腹壁固定術を行った
柴犬10歳が連日続く嘔吐で来院された。バリウム造影検査を行い、完全腸閉塞と判断したため緊急開腹による空腸切開術、および胃切開術をおこなった。回収された閉塞性異物は甘栗であった。
摘出した栗
バリウム造影検査所見(開始後8時間)。小腸エリアにバリウム欠損像が見られる。また胃に蓄積した造影剤は動いていない
てんかん発作を主訴に他院から転院してきた4歳ポメラニアン。診察の際に咳をしていたため聴診と気管支テストとレントゲンを実施した。食道拡張が懸念される画像であったため造影検査を追加実施した。
レントゲン造影の結果、食道全域に拡張を認めたため、血液検査および免疫疾患検査、自律神経検査、甲状腺および副腎ホルモン検査、抗アセチルコリンレセプター自己抗体の検査を実施した。現在結果集計中である。
2時間前の散歩中に栗を食べたという主訴のシュナウザーが来院された。レントゲン造影検査で胃内に異物陰影が確認されたため、即日、内視鏡バスケット鉗子による異物摘出を行った。異物は噴門部近辺に認められた。
2歳日本猫メス(避妊済み)が、2日前より嘔吐を繰り返し、内科療法を試みるも改善がみられなかったため、姉妹病院から搬送されてきた。異物も疑い内視鏡も希望されてきた。レントゲン造影検査で閉塞所見は見られなかったものの食道拡張を呈していた。内視鏡を実施したところ、胃の幽門部に胆汁逆流がみられ、小腸絨毛が白色を呈していた。また肛門からの内視鏡では、横行結腸に粘膜びらんがみられた。それら部位を生検鉗子にて採材し、細胞病理検査に提出した。
内視鏡開始時
食道中央部
胃の噴門部。粘膜が赤みを帯びている。
胃底部
胃噴門部。胆汁の逆流が認められた。
小腸。絨毛が粗く、胆汁によって染まっている
横行結腸にみられた肥厚性病変。
3日前に嘔吐で来院され、当院獣医師により内科療法を試みるも嘔吐の症状が消えない6か月ダックス♂。レントゲン造影を実施し、腸閉塞が判明したため、外科的治療を依頼された。
レントゲンを再確認したところ、腸重積所見も確認され、緊急オペを実施した。
柴犬12歳♂が慢性的下痢で来院。血液検査で低たんぱく血症(ALB1.9g/dl)であったため、精密検査を実施した結果、IBD(炎症性腸疾患)である事が判明した。
内視鏡実施時、確認された小腸病変。内視鏡生検による病理組織学的検査で『慢性重度好酸球性萎縮性腸炎』であった。
さらに内視鏡を十二指腸奥へとすすめると重度腸病変が確認された。病理組織学的検査では上記と同様の診断名であった。
炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の特発性消化管疾患である。病理学的には『好酸球性』と『リンパ球性プラズマ細胞性』の2種類がある。現在までの研究では好酸球性のものはある種蛋白に対する過敏症(感染性生物、食物等に対するアレルギー反応)とされている。またリンパ管拡張所見の有無は食餌療法を決定していく上で重要な所見である。治療法としては以下の治療薬により消化管症状、全身状態を改善しうる事が分かっているが生涯投与になる事も多く、発見が遅れれば命にかかわる疾患である。
①免疫抑制剤(ステロイド免疫抑制用量)
②抗生物質(メトロニダゾール、タイロシン、OTC等)
③過敏性大腸炎治療薬(サラゾ)
④食事療法(新奇蛋白食や低アレルギー食等)
2時間前に釣り針を飲んだといい来院されたダックス。レントゲン検査によって胃内にある事がわかったため内視鏡検査えお実施した。上図レントゲン所見で胃底部にあることが分かる。
上方向からの撮影(DV像)。このレントゲンから胃底部→胃体部へ金属状異物があることがわかる。
内視鏡写真。画面右斜め下に釣り針があることが分かる。
内視鏡からワイヤー状器具を挿入し、針を摘出した。摘出する際、針が食道を傷付けるのを防ぐためにオーバーチューブ法を用い、食道を保護しながら安全に摘出した。
健康診断で、偶発的に見つかった肝臓内胆管結石。
1/10の割合でEHBOへ移行して総胆管十二指腸吻合術になる事があるが、無徴候で経過する症例も多く経過を入念に診てあげるにつきる。