膀胱アトニー

【概要】

膀胱アトニー(あるいは排尿筋アトニー)とは、何らかの原因(膀胱収縮をコントロールしている神経の病もしくは尿路の詰まり物性)によって

『排尿ができなくなり⇒膀胱に尿を溜めすぎてしまい⇒伸び切ってしまい⇒過拡張により⇒膀胱排尿筋が中で千切れてしまい⇒収縮出来なくなる=排尿出来なくなる』

という事が原因で起こります。

簡単にいうとゴム風船を膨らましすぎて伸び切ってしまった状態と思うと分かりやすいかもしれません。

重要なことはこの状態が長期間持続すると,排尿筋間に線維化を生じ元通りに治らなくなり生涯膀胱アトニーのケアが必要となってしまう事があるため早期の適切な診断と積極的アプローチ(カテーテルによる継続的減圧法)が治療の成功と失敗を分けます。迅速に治療がなされないと一生涯膀胱アトニーと付き合わなくてはならなくなる可能性を秘めているからです。まず担当された獣医さんが排尿出来ない病態が膀胱アトニーに由来する可能性があることを見抜く事が重要です。

 

 

 

【原因】 

◯神経病由来の膀胱麻痺(膀胱がしぼませられないまたは溜まったけど気が付かない)

 ◯上の方の神経障害

 ◯下の方の神経障害

◯尿道出口の閉塞(出したくても詰まっていて出せない)

 ◯結石

 ◯腫瘍

 ◯炎症

 

【症状】

最も多いものは尿が出ないです。

◯有痛性排尿

◯無尿

◯溢流性尿失禁)

 

【診断】

①まず尿道が物理的に通過しているかや閉塞物がないかの診断をします。

◯エコー(尿が溜まっているか)

◯レントゲン(お腹全体チェック) 

◯カテーテル導尿(尿道は通ってる?)

 

②次に原因の詳細を調べます

◯尿道の閉塞性なら何が詰まっているか

 ◯尿検査(結石や詮子の有無)

 ◯細胞診(腫れ物なら)

◯神経病由来なら

 ◯神経学的検査

 ◯画像診断(X線,MRIなど) 

 

③身体の状況を調べます

◯主に尿を溜めすぎて腎不全を起こしていないか

 ◯血液検査

 ◯エコー検査

 

【治療】

次に治療に入りましょう。膀胱アトニーの治療には原因の治療とそれにより起きている状態の同時ケアがとても重要です。

なぜ排尿が必要かと言うとまず尿は身体の毒物を体外に定期的に出す作業です。健康な猫は1日あたり20-40ml/体重の尿が作られて体外に排尿されます。24時間以上排尿ができないと身体に毒物がたまり、尿が膀胱に溜まりすぎてしまうため膀胱破裂や膀胱破裂による尿素性腹膜炎を起こしたり、または急性腎不全を起こしその後治療がなされても不可逆性になり命に関わる可能性が出て来るからです。通常、閉塞性腎不全を起こし72時間以上が経過すると腎臓に後遺症が残り、長期的に見たときに寿命の短縮が起こりえます。

 

原因の治療

・神経原性の治療(神経病の治療)

・非神経原性の治療(尿路閉塞の治療)

排尿管理(膀胱容積を減らし回復させる)

 ・カテーテル管理

  ・カテーテル留置314日間

  ・カテーテル一日3回導尿

 ・圧迫排尿(UMNsは禁忌)13

  ※細菌培養と感受性

 

⇒膀胱容量を小さく維持すると、排尿筋間のタイトジャンクションが再構築され、排尿筋の収縮力が回復する可能性があるため積極的な治療が動物を救済する可能性があります。消極的な治療を行うと膀胱破裂、腎不全、恒久性膀胱アトニーを引き起こしさらに治療は大変なものとなります。迅速に対処しましょう。