ここでは患者様向けに皆様が動物病院に来院される病気やお医者さんから言い渡されるワードのうちとても良くあるものをなるべく短めに簡単な説明と治療の傾向と対策を上げていきたいと思います。あかさたなで分類してあります。
血尿とは目に見える出血を伴うものや、目に見えない検査上で見つかる潜血を伴う血尿があります。
尿を生成する腎臓から尿管、尿をためておく膀胱、膀胱から体外までをつなぐ尿道のどこかで出血があると血尿となります。
診断には頻尿感の有無などの問診、尿検査、超音波検査により診断に向かいます。
気になる症状がある場合は気楽に獣医師に相談しましょう。
【気管虚脱とは?】
これは比較用に正常所見をあげておきます。
気管はのどから肺に空気をおくる管でC字の軟骨が気管の周りを圧でつぶれない様に取り囲んでいます。
ここに紹介する気管虚脱という病気はその気管が呼吸のたびにペコンとつぶれてしまいうまく空気の出し入れがしにくくなる病気です。たとえるなら飲み物を飲むとき思い切り吸い込み潰れたストローのようなイメージです。
【原因】
傾向としては小型犬(ポメラニアン、ヨーキー、トイプードルなど)によく出る傾向があります。
関係ある要素としては吠える、肥満化、歯槽膿漏などの口腔内感染、過呼吸、過剰な興奮等が指摘されています。
【種類】
①頸部気管虚脱・・・気管のうち頸の部位の器官が虚脱する疾患でガーガーアヒルのような鳴き声のような音が聞こえることもあります。主に興奮後、運動後が多いですが安静時でも起こりえます。症状が進むと呼吸困難が深刻になり涎をたらしたり、眼を見開き舌の色が青くなったり、時に失神を起こすことすらあります。
②胸部気管虚脱・・・上記の虚脱(気管がつぶれた状態)が胸の気管で起きた場合をいう。
【治療】
治療には内科的治療と外科的治療があります。よくかかりつけ医と相談して治療方針を決めていきましょう
呼吸困難が重度の場合、検査を優先せずまず酸素をたくさん吸える環境を医師に作ってもらいます。ある程度酸素が吸えて落ち着いたら検査し診断を下し、下記の治療について相談しましょう。
内科療法
1:気管支拡張剤
2:消炎剤
3:去痰剤
4:鎮咳剤
外科療法
1:気管プロテーゼ
上記の正常所見と比べてかなり気道の一部が狭くなっていることが分かります。
これは先ほどの狭くなっている気道を真上から撮り気管を断面にみた画像です。矢印の場所が気道で本来はまん丸ですがCの字をしていることがわかります。
ひとこと
気管虚脱もまた非常に多い疾患です。症状や部位、年齢など総合的に考慮したうえで相談しながら治療法を決めていきましょう
胸の中の肺と胸の壁の間の隙間に空気が漏れて、量が増えると肺を圧迫するため呼吸がし辛くなる状態。圧迫の度合いによってはショックを起こしうる非常に危険な状態である。
【原因】
①自然気胸・・肺にできたブラと呼ばれる肺の膜が薄くなって盛り上がった状態となったもの(気腫性肺嚢胞)が破れるこ
とで、吸った空気が肺から胸の中に漏れることが多いです。そのほかの原因として腫瘍、寄生虫、異物など
が報告があります。
②外傷性気胸・・外からの外力によって生じる気胸です。胸壁に穴が開き胸の中に空気が入ったり、穴が開かなくても肋骨
が折れて肺を傷つけて肺に穴が開き発生したりします。また外圧により肺挫傷をおこしてなることもあり
ます。
③医原性・・・医療行為により発生してしまうものです
【検査や治療】
呼吸が切迫しているケースでは聴診やレントゲンや超音波を用い気胸と診断を下します。処置として注射針を胸に刺して肺と胸の壁の隙間に漏れ出た空気を抜きます。その際、興奮状態にあり呼吸状態が悪くなるおそれがある子には安全性のため鎮静剤の使用をすることもあります。また呼吸状態によって全身に影響がでていることもあるため血液検査や血液ガス検査等も同時に実施します。通常この段階ではCTをお勧めする事は特別な事情がない限りありません。
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胸の中にある空気を抜いたらそれで気胸が止まるか、またどのぐらいの速度で溜まってくるかを見ていきます。
・止まる場合、しばらくの間安静を保ちながら経過により対応のプランを検討します。
・1日に何回も針による処置が必要となるケースでは病む追えず胸の中にチューブを入れ定期的に空気抜きをします。
・上記処置を行いながら安定化するか経過を見ていきます。呼吸状態が安定化してきたらCT等で胸腔内精査を実施します
・針による穿刺やチューブケアでもなかなか空気の漏出が止められないケースでは開胸を行います。
副腎と呼ばれる腎臓の頭側にある小さい臓器はストレスから体を守るためコルチゾールというホルモンを出して血糖値を上げ血圧も上げて生命の危機を乗り切らせるホルモンを出します。また塩分、カリウム、水分のコントロールをしているアルドステロンというホルモン、アドレナリンなどを分泌し身体を危機から救っている実に大切な臓器です。副腎は皮質と髄質に分けられる、皮質から分泌されるホルモンの過剰分泌がクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症=副腎皮質が働きすぎてる病気)と定義され、さまざまな疾患が含まれます。
【原因】
クッシング症候群は先に述べましたストレスから身体を守るコルチゾールというホルモンを作りすぎてしまう病気です。
このコルチゾールは脳からACTHという副腎への指令ホルモンが副腎宛に出され、それを受けた副腎がコルチゾールを出すという仕組みになってますが、どちらが働きすぎを起こしてもこの病気になりえます。脳からホルモンが出すぎてて副腎がつられてたくさんホルモンを出してしまうパターン、脳ホルモンは普通でも副腎が勝手に働きすぎてホルモンをどんどん出すパターンがあります。
脳(下垂体性)はボクサー、ダックスフンド、ミニチュア・プードルに、副腎性はジャーマン・シェパード・ドッグ、トイ・プードルに多い傾向にあります。
【症状】
多飲・多尿、ポップベリー(腹部下垂、腹部膨満といった特徴的な外貌)、多食、皮膚の菲薄化、皮膚線条、痒みを伴わない左右対称性の脱毛、肥満、筋肉の脆弱化、嗜眠、皮膚の色素沈着などがあげられます。
犬の下痢もヒトと同様に様々な原因があり、それによって対策にも違いがあります。そのため、下痢症状に合ったそれぞれの対処法をとるのが治療のゴールへの早道です。
まず
【症状から見た下痢】
まず以下のどれか該当するものをチェックしましょう
A急性or慢性か?
Aウチの子は急性なのか?
見方として長期続いているかどうかで見ると判断つきやすいでしょう。
長引いている場合はしっかりと原因を見つめていく必要があります。食事や投薬でのケアなど対策は異なります。
B小腸性or大腸性下痢か?
腸は胃より肛門までの間をとり持つ管で小腸と大腸というエリアに分かれます。
小腸と言う場所に端を発した下痢は小腸性、大腸による下痢の場合は大腸性と呼ばれます。
見極め方は
①下痢の頻度
1日1〜2回の場合は小腸性、5〜6回だと大腸性の可能性があります(食事量に影響があると思います)
②一回の便の量
小腸性は一回の量が多い傾向にあります。また大腸性は一回量が少ない傾向があります。
③血便がある場合の特徴
小腸性では肛門から出てくるまでに距離があるため酸化を受け血液が赤から黒に変色するため黒色便となります。また大腸性では真っ赤な血の色
の鮮血である事がおおいです。粘膜や粘液は大腸性でよく見られます。
④しぶりの有無
しぶりは排便しにくそうにしてる仕草です。大腸性下痢によく見られる特徴です。
C下痢の原因は消化管かそれ以外か?
これを分類していく事が重要です。Cは獣医師が判断するべきポイントになります。
この診断は病院で検査をしてもらった上で判断してもらう必要があります。
消化器以外の問題で下痢が起きる原因は腫瘍性疾患、胆嚢肝臓疾患、膵臓疾患、精神性、腎疾患などです。
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上記のABCの質問の結果(ご自宅診断ではABだけでも)合わせて分類すると
・急性小腸性下痢
・急性大腸性下痢
・慢性小腸性下痢
・慢性大腸性下痢
・消化器以外を原因とする下痢
と分類できます。それぞれの特徴を診ていきましょう。また家の子がどれに属するかもみてみてください。治療法が少し見えてきますね。
①急性・小腸性下痢
軽度の急性・小腸性下痢では、大きな心配はいりません。一過性である事もあります。自然に治癒するか慎重に経過を見る必要があります。
重度な急性・小腸性下痢は病原性細菌(サルモネラ・大腸菌など)ウィルス(ジステンパー・パルボ・コロナなど)・寄生虫・
有毒物の誤飲誤食
出血性の胃腸炎
急性膵炎
などで起きる事があり原因が特定してそれぞれへの対処・治療が可能です。
②急性・大腸性下痢
急性・大腸性下痢には
鞭虫、痙攣性大腸炎(過敏性腸症候群など)、細菌性大腸炎、ストレス性
これらは、それぞれの治療薬・抗生剤の投与などにより安定化させられますが、まれに慢性症状に転化する傾向があり注意が必要です。
③慢性・小腸性下痢
慢性・小腸性下痢を厳密にチェックするためには、食事・各種の小腸疾患・腸以外の疾患、などを鑑別が必要です。
長続きしてしまう下痢については体質に応じた食事療法や原因をつめるために内視鏡生検、超音波画像診断、PCRなどを相談させていただくこともあります。
④慢性・大腸性下痢
鞭虫・寄生虫、潰瘍性、好酸球性、細菌感染、ポリープ・腫瘍、アレルギー性、痙攣性など原因は多岐にわたります。こちらも慢性小腸性同様に各種の精密検査を行い状況によっては正確に治療する事をお勧めします。
抗菌剤や整腸剤・駆虫薬などとともに、食物繊維や栄養素を用いた食事療法が検討されます。
⑤消化器以外を原因とする下痢
各種の疾患の治療を行うことを優先しながら動物が脱水、栄養障害にならないことをチェックしていく必要があります。
※ここまでで①~⑤までどれに分類できるかができたかと思います。
重要なポイントは特に③④⑤は長期続いているという経過にあるため一過性ではなく何か長引いている原因があるため、それを知るほうが治療へ導かれるということです。 獣医師に相談してみましょう。その時食事歴、環境の変化、投薬の有無等わかるとヒントになるかもしれません。
次に
【メカニズムから分類する下痢】
これは上記の病気の発生位置による傾向と特徴と異なり、どのような理由から便が緩くなるかを解説します。
・蠕動運動性下痢
腸の伸び縮みが早くなりすぎて便の通過が早くなりすぎ、水分が吸収される時間が足りずに下痢になる。
・浸透圧性下痢
腸の外と管の中は水の行き来があります。消化しにくい成分を食べてしまったり、腸の中が高濃度になると水が腸の中に引っ張られて下痢になります。
・分泌性下痢
菌の毒素、ホルモンの影響で消化液分泌過多で便中水分が増えます。
・浸出性下痢
腸の傷から炎症が起こり、そこから水分などが出たり、全体に傷が至ると水分の吸収を妨げてられ下痢となります。
【原因から見た下痢】
では最も原因として診察していて多いものは何か、一緒に考えていきましょう。
1:過食
2:フードの急な変更・・成分の急な変更に対応出来ないまたは成分にアレルギーがある場合
3:ストレス・・・自律神経が乱れ腸の動きや消化液の分泌が増える
4:感染症・・・細菌、ウイルス、寄生虫
5:その他の原因
まず自宅でできる対策(主に一過性のケース)
・食事を控えめに与える。下痢をしている多くの子は腸粘膜が荒れていて多くのご飯を吸収する力がありません。また多くご飯が入ってくると働かないとと頑張りすぎて、さらに腸が疲れてしまいます。
まず、腸を休ませ徐々にリハビリさせていきましょう。また思い当たる原因があれば避けてみましょう。
【対処法】
下痢をした場合、一度にたくさんの食事を消化できなくなるため、たくさん与えても消化管に負担をかけてしまいます。そのためまず食事の量をセーブしてあげ仕事を減らす事により消化管の回復を促しましょう
初日:絶食
2日目:与える総量を一日量の25%にし、それを4-5回に分け与える。
例:いつも一日100g食べてる子が下痢した場合、2日目の一日食事量を25%まで減らし、それを5回に分け
て与えるので、一回量が5gとなる
3日目:2日目と同じ
4日目:与える総量を一日量の50%にし、それを4-5回に分け与える。
5日目:4日目と同じ
6日目:与える総量を一日量の100%にし、それを4-5回に分け与える。
7日目:6日目と同じ。
以降、回数を減らし、一日二回を目指す。
途中下痢がひどくなるなら絶食し、獣医師に相談する事。
3か月未満の幼犬にはこの方法は行わない事。
甲状腺はヨウ素というご飯に含まれる成分を利用して甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺ホルモンは体を発達させたり、生活に必要なエネルギーを作り、体温や新陳代謝に大きく関わるホルモンです。
甲状腺の力が落ちるという事は甲状腺から出るホルモン(サイロキシン、トリヨードサイロニン)が足りなくなり、身体に不具合を起こします。
【原因】
甲状腺は脳から指令を受けてホルモンを作ります。脳は下垂体という場所から視床下部という場所へ指令を送り甲状腺に命令を伝達します。この経路に異常をきたすと機能が低下します。難しい名前で分類すると
①一次性(原発性、甲状腺性)
②二次性(下垂体性)
③三次性(視床下部性)
犬の本症の約95%は原発性と言われております。
また、いつから病気が始まったかで原発性甲状腺機能低下症は先天性(クレチン病)と後天性に分類されます。犬では特発性甲状腺萎縮とリンパ球性甲状腺炎(サイログロブリンや細胞膜に対する自己免疫反応により甲状腺が破壊される)によるものがほとんどです。
年齢は3~6歳の成犬期からゆっくりすすむことが多いですが発見されるのは高齢犬が多い傾向にあります。
【症状】
最も目立つ症状は「老け込んだ感じ、不活発、脱毛、肥満」。皮膚が肥厚するため(粘液水腫)悲しげな容貌を示し、尾の脱毛により、いわゆるラットテールが観察されるます。また低体温寒がりになった、嗜眠、無気力、倦怠、耐寒性の低下、元気消失、運動不耐性、体重増加、皮膚の乾燥や冷感、色素沈着、角化亢進、徐脈、不妊、発情周期不全、精巣萎縮、筋力低下、脂漏症、角膜への脂肪沈着、角膜潰瘍などが認められます。さらに、リンパ球性甲状腺炎では頸部の腫脹が認められます。
全てが揃うわけではなく意外と飼い主さんが気がつかれない事が多い印象です。外耳炎や皮膚炎が治りにくくなったということもあります。
【検査】
簡単な採血検査可能です。ホルモン値を測定いたします。
【治療】
一般的に機能低下症にはチラージンという甲状腺ホルモン製剤の補充療法が実施されます。投薬初期に興奮が出たりする子は少なめから調整すると良いでしょう。一度破壊されてしまっている甲状腺を元通りにすることはできません。しかし合成甲状腺ホルモン剤をあげることで気力体力は戻り元気に生活できるようになります。
ひとこと
高齢化を迎えとても多い疾患の一つです。飼い主の方は毎日接しているため変化がゆっくりだと気が付かれないケースも多いものです。また老化?と思ってしまいがちな病気です。よく寝るようになった、毛が薄くなってアクティブでなくなってきたら一度獣医さんに相談してみましょう。どこのクリニックでも検査は実施可能です。
ただしホルモン補充療法は慎重に実施に踏み込むようにお勧めします。ホルモン補充療法はひとたび始めれば自らホルモンを作る力は失われます。大切な我が子のためにも、しっかりと誤りのない精密検査の上で補充療法開始してください。
【 MPL とは】
犬の膝蓋骨脱臼は後ろ脚にある膝のサラが元々ある位置から外れてしまった状態をいいます。元々お皿は少なくとも半分は溝にハマっていないといけないものです。おもに身体の内側方向に外れる内方脱臼(Medial patellar luxation: MPL)が多く膝関節の不安定性によって、跛行の原因疾患として高率に発生します。膝蓋骨内方脱臼は、犬における最も一般的な膝関節の異常の一つとして認識されています。また体の全ての脱臼のうちの20%と言われるほど高率な発生率です。
この疾患は軽度ものから重度な跛行を示すものまで非常に多様です。脱臼の方向は、内方、外方、または近位方向への脱臼が報告されています。統計上内方脱臼ら75〜85%とされ、外方より多い傾向にあります。また両側は20%であるとされております。
小型犬種は内方脱臼が多く、大型犬種は両側どちらも多い傾向にあります。またまれにアビシニアン、バーミーズなどのネコ種でも内方脱臼が見られますが犬のように一般的ではありません。
【原因】
先天性の発育の異常による変形が多くを占め両側に発症する傾向にあります。それが年齢と共にその異常が進行することが1番多い要因です。他には外傷性がありますが外傷を受けた側に発症が見られます(骨折や股関節の異常など)。また骨に関係した栄養障害などによる変形によって生じてしまうこともあります。
【 MPL 分類と症状】
膝蓋骨内方脱臼(MPL)を伴う骨格変形の度合いは軽度から重度まで多様な臨床徴候および病理学的変化があるために、犬の膝蓋骨脱臼に対する分類法が確立されています。膝蓋骨の脱臼及び骨格変形の重症度を分類することは、診断および治療方針を決定する上で非常に有用となります。診断の仕方は動物の身体を横に寝かせ、片手で膝蓋骨を軽くおさえながら足首を外側⇆内側を繰り返します。これにより脱臼方向とレベルを確認しましょう。
Grade 1:
通常の運動中に膝蓋骨が脱臼することは稀である。間欠的な膝蓋骨の脱臼は、時折、後肢の挙上の原因となる。膝蓋骨は、指で押すと容易に脱臼させることが可能であるが離すと膝蓋骨は自然に正しい位置に戻る。このグレードの患者は、膝関節の支帯構造が障害を受けた場合に臨床症状が悪化し、膝蓋骨脱臼の重症度が進行する可能性がある。
通常の一般身体検査時に偶然発見されることがあり、激しい運動後に跛行を示す原因となりうる。
Grade 2:
膝蓋骨は中央に存在していて指で押すと脱臼するがグレード1と違いは自然に戻らず、脱臼した状態をキープする。指で元の位置に向けて押すと速やかに元の位置に戻る。一般的に痛みを示すことはなく、時折スキップをするような軽度ビッコを呈する。MPL(内方脱臼)では外れている時は脛の内方への回転およびかかとが外方向へ向く事が特徴的。
時々スキップ様歩行したり、肢を挙上し、膝関節を数回屈伸した(膝蓋骨を整復しようとしている)後、再び体重を負重し始める。ジャンプすることを嫌がる等の症状が多い。
Grade 3:
膝蓋骨は常に脱臼していて、指でお皿に圧をかけると元の位置に戻れる。歩くとまたは足の屈伸でまた脱臼する。
より重度な骨格変形が認められ、明らかな脛の内側への回転、大腿骨遠位と脛骨近位のS字型湾曲が特徴的である。
これらの患者は頻繁にビッコをして、支帯構造が障害を受けている場合には、持続的なビッコをする事もある。多くの動物は膝関節を若干屈曲させた状態を維持する。
罹患症例が示す跛行の程度は、軽度または全く示さないことも少なくなありません。
明らかなビッコを示す症例においては、お皿の表面と接している部分の軟骨の擦れが痛みに関与していることが推測できます。慢性的に脱臼している犬における急性のビッコは、前十字靭帯断裂の併発の可能性も考えなければなりません(慢性膝蓋骨脱臼に罹患した中年齢および老齢犬の膝関節の 15% から20% に前十字靭帯損傷が存在)
Grade 4:
膝蓋骨は常に脱臼していて指で押しても元の位置に戻せないレベルがこのグレードです。大腿骨滑車溝は浅いかまたは消失しており、時には頭側に突出しています。膝関節を支えている組織の異常および大腿骨ならびに脛の骨変形が顕著となる。患者は、膝を伸ばせなくなり、うずくまるようにして歩行します。早期に矯正されない場合、重度な骨格および靱帯の変形が生じ、矯正または修復が困難な状態となる場合があります。
罹患動物はカニのような姿勢をとる場合が多く、歩行が困難な場合が多いです。
体重の増加、関節軟骨の擦れ、脱臼頻度・時間の増加、前十字靭帯の断裂、または股関節脱臼等がMPL (膝蓋骨内側脱臼)と同時に起こった場合、動物の臨床症状は悪化していきやすいです。
【治療】
外科vs内科(整復vs温存)
MPLに対する治療は、先にお示しした症状、経過、犬種、年齢、体重、その他の併発疾患(特に前十字靱帯断裂)、グレードなどで決めていくと良いでしょう。
手術方法
【MPL の予後】
犬および猫の膝蓋骨脱臼に対する外科的治療の予後に関しては、Grade 3 までは一般的に予後は良好と考えられ、これらの患者の成功率は90%以上と報告されています。
報告では術後にGrade 1 の膝蓋骨再脱臼は約半数の患者において認められますが、通常は再手術の必要はないものです。膝蓋骨脱臼のGrade 4 に罹患した患者の予後に関する報告は少なく、個々の患者および骨格変形の重症度によりその予後は様々であると推測されます。
ひとこと
パテラとよばれる膝蓋骨脱臼症は非常に診断する機会が多い体質です。初めて診断を言い渡された方は「脱臼?」大ごとだと考えてしまいますよね。パテラは外れやすいということで決してすべてが手術しなければならないわけではありません。ステージによってその対策や経過の見方など皆異なります。焦らず我が子の体質の対処法を相談していきましょう。
【 腎不全 とは】
腎臓は体内で不要になった老廃物や毒素を尿という形で体外に排泄する仕事をしています。また骨の代謝や血液を作る仕事、体液のバランスを維持する仕事も同時に担っています。
腎がやられるとその仕事ができなくなるため毒素が体に蓄積し重度になると尿毒症と呼ばれる症状を起こします。
腎不全は正常な腎機能の3/4(75%)が失われると起こります・
【原因】
腎臓によくない毒物摂取や感染症により悪い菌やウイルス等の病原体が腎臓を壊したり、結石等で尿の流れが滞ったり血圧が保てない状態が続いたりすることが原因であることが多いです。また口腔内の歯石の菌毒素が原因になる事もあります。また人同様、糖尿病や高血圧も腎機能障害の原因となることもあります。
【 腎不全の分類】腎不全は経過によって急性期と慢性期に分けられます。そして急性期はその原因となる(腎不全の起こる場所)により①腎前性腎不全②腎性腎不全③腎後性腎不全に分けられます。簡単に解釈するとするなら腎臓そのものがスタートの場合が腎性腎不全、腎臓に入ってくる血管の血流(心臓や血流量低下に原因がある場合)などに問題が生じ腎臓に影響があった場合が腎前性腎不全、腎臓を出て尿の排泄経路等に異常がある事から腎臓に影響が起きたものを腎後性腎不全と分類する。この分類(急性期か慢性期かor腎前性か腎性か腎後性か)は治り具合に影響するワードなので頭に入れておいてほしいです。
ではどのような症状が出うるか。これも急性期と慢性期でやや異なります。
急性腎不全では毒素が急に体にたまりだすことにより食欲不振、吐き気、嘔吐がみられ、腎臓か尿を作れなくなると乏尿または無尿になり本来尿に排泄しているカリウムが体に蓄積して致死的状態になるので注意が必要です。
慢性腎不全はステージ1~4に分類されていて各ステージで症状が異なります。ステージ1は基本無症状です。ステージ2はよく水を飲み尿も多くなります。ステージ3は食欲が落ちたり、嘔吐、体重減少、貧血等が出始めます。ステージ4は一番危険な状態で嘔吐や痙攣がメインです。
【治療】
1:水分補充・・ステージと脱水具合に応じて静脈点滴or皮下点滴or自由水飲水を獣医師と相談しましょう。
2:蛋白塩分制限・・食事療法により不器用になった腎臓の負荷を減らすよう蛋白制限をお勧めすることがあります。あまり早期の介入はお勧めいたしません
3:吸着剤・・・本来腎臓が尿から体外に出しているリンや窒素を吸着する薬剤を用いた治療法です。
4:血管拡張剤・・腎内高血圧を抑えるためにACE阻害薬やARB阻害薬等を用います。
5:透析医療・・腹膜透析と血液透析がありそれぞれ利点と欠点があります。詳細は腹膜透析の項目参照ください。
ひとこと
腎不全は非常によくある疾患で、その治療内容はここにより異なります。重度であれば入院24時間点滴や透析により救命をはかります。通院での管理が可能な子では点滴や食事管理といったことをやりながら定期的に血液に毒素が溜まっていないか確認し治療法の微調整を行い、その子のステージに、体質にベストのパターンを探していきます。
【原因】
歯の表面にべっとりと付着した歯垢は、食べ物のかすと細菌のかたまりで、たびたび炎症をひきおこします。その歯垢に唾液のカルシウムが沈着して歯石となります。歯石の表面はザラザラしておりまた食物などがくっつきさらに歯石がつきやすくなります。唾液の性質と量は、歯石の形成に大きく影響とされてます。唾液の少ないと歯垢の形成が速く、また軟らかい餌を食べてる犬はドライを食べている子より歯垢の蓄積は速いといわれています。
【症状と経過】
歯に付着している歯石や歯垢は放置しておくと、歯肉炎をおこしします。炎症は徐々な進行して歯肉が歯からはがれて歯周ポケットが深くなります。そこに歯垢とともに細菌がたまり増殖し炎症を起こし、また歯周ポケットは深くなっていきます。この歯周病をおこす細菌は嫌気性菌(酸素を嫌い、閉鎖的な場所で増殖する性質の細菌)で、歯周ポケットで増殖し、毒素を放出するために歯槽骨が溶かされ歯がグラグラになっていきます。歯周病にかかった犬は、口臭が強く、歯肉ははれて出血しやすく、歯がぐらぐらになって抜け落ち、硬いものが食べられなくなります。
【治療と予防】
初期の治療では歯垢や歯石の除去や薬物投与によって多くは改善します。中度から重度のものでは外科的な処置が必要となります。歯がぐらぐらになった場合は抜歯します。治療によって歯石を除去した後もご自宅で日々磨く習慣をつける必要があります。子犬の時から歯ブラシで歯をみがく習慣をつけることが大切です。
ひとこと
現場で高齢の動物の診療をしていて腎臓病や肝臓病、気管支炎などの子をみていると歯周病や歯石持ちの子はとても多いのは事実です。口は血流が多くまた唾液で口の菌は消化管に流れ込みますから納得ですね。人の医療においても歯周病と糖尿病、心疾患、腎疾患等は因果関係が証明されてきております。口腔内衛生も体を健康にいさせるコツですね。
【膵炎とは】
膵炎は2タイプあり、急性と慢性とに分かれます。急性膵炎は下痢嘔吐や腹痛、等突発的に起きることが多く、慢性膵炎は無徴候(症状がない事)があるタイプです。
動物種としての罹患率は犬が急性が多い傾向に、猫は慢性が多い傾向にあります。
膵臓の元々の働きから見てきましょう。
膵臓は腸に入ってきたご飯を溶かす酵素を出したり様々な働きをしています。
急性膵炎は膵臓から分泌される本来は『ご飯を消化するための蛋白分解酵素』により膵臓そのもので自己消化(自分の酵素で自分の膵臓を溶かしてしまう)がおこってしまい、結果膵臓そのものが溶けて(壊死)炎症が起きます。消化酵素の力は強烈ですので、血管を酵素が漂えば多臓器不全や血管炎など非常に危険な状態を引き起こします。急性では一般的に炎症の波及は急速です。また慢性膵炎はじわじわと膵臓を破壊していく病気(線維化)で膵臓機能障害を引き起こし、炎症の波及は炎症の波及はゆっくりでじわじわ機能不全になります。
【原因】
犬と猫では発症の原因と病態事態が異なるのが膵炎の特徴です。
膵臓の中にある消化酵素は腸に出てから活性化するため、膵臓の中では本来活性化してない状態で仕舞い込まれています。その膵臓からご飯を消化するために分泌される蛋白分解酵素の元が何かの原因で膵臓内で活性化してしまい、ご飯を溶かすはずの酵素が膵臓そのものを溶かしてしまいます。すると膵臓が破壊されると炎症が起きサイトカインが大量に放出されたり、消化管内の菌の体内への移動がおきてしまいます。そして周辺の脂肪組織が膵臓の脂肪分解酵素で溶かされたり、腎不全、循環障害、腹腔内出血、敗血症、などによる多臓器不全を引き起こしてしまいます。
膵炎を起こしやすくしてしまう要素としては肥満、高脂肪食、薬剤、高カルシウム血症、尿毒症、外科的外傷などが指摘されています。
【症状】
急性膵炎では激しい腹痛、下痢、嘔吐、発熱を引き起こすことが多いです。元気がなくなり嘔吐をして来院されるケースが多いです。
ゆっくり進む慢性膵炎の場合、膵臓の荒廃により消化酵素を作れなくなる膵外分泌機能不全を起こすことがあり、下痢がメインの症状と言うこともあります。無症状のケースもあります。その場合、酵素が足りてなくて下痢してしまうわけですから消化酵素の補助的治療が必要となるケーズもあります。
【治療】
重症の場合や重症化のリスクがあると判断された場合は、先に述べた膵臓を溶かし始めている蛋白分解酵素の働きを止める薬剤の投与を行い、また膵炎による痛みに対して鎮痛薬を用います。これは静脈内点滴で行います。通常発症から24hは絶食として膵臓への負荷を避けることが多いです。消化管のケアもカギとなります。膵臓は消化管に膵管という管を通して消化酵素を流し込んでいます。そこの粘膜が痛むと膵管の出口も塞がれ膵炎の悪化要素となるため粘膜が傷まないように腸粘膜を保護するお薬を併用したり、膵管に菌が入り込んでこない様に抗生剤の処方します。また嘔吐は消化液の膵管への逆流をおこしうるため吐き気を抑えることも重要となります。
箇条書きに分かりやすく治療の骨格を書き記しておきます。
①食事制限
一日以内の食事をストップする事で酵素の分泌そのものを止め、膵臓の働きを抑えることで急速な自己破壊をストップさせる方法です。
②薬剤療法
・鎮痛剤
・蛋白分解酵素阻害薬
・膵炎治療薬(ブレンダ)
・抗生剤
・制酸剤
・制吐剤
・消化機能改善薬
・鎮痙剤
・粘膜保護薬
・輸液など
③ 食事療法
膵臓への負担に配慮されたフードを選んでいきます。ポイントは以下です。
・低脂肪食・・主に犬では高脂肪食と膵炎の関連が証明されているため、膵臓負荷の少ない低脂肪を選択します。猫ではまだ議論中です。
具体的には犬では10%、猫では15%を目安とします。
・高消化性食品・・消化性が悪い食事は膵臓がいつも以上に働いてしまうため消化良いものを
④栄養補助療法
・中心静脈栄養・・頸静脈に点滴用カテーテルを設置し、高栄養点滴を実施できるようにする事で食餌出来なくなった体を補助する方法です。
・空腸チューブ‥膵臓が付着している腸より下にある空腸にチューブを設置し食事を与える事で膵臓を働かぜずに食事を与える方法です。
・動物種による対応・・猫では必須なタウリンが不足しなうように注意する
治療の度合いはその子によってまちまちで体に炎症が波及してしまいそうな重症なケースでは数日入院治療が必要とする事もあります。
ひとこと
膵炎には強弱様々な発症レベルがあり、軽度~重度まで対応が異なります。軽度では食事管理や通院注射と内服などでケアが可能ですが、重度で絶食と点滴治療+上記の薬剤療法+栄養管理といった長期入院集中ケアが必要になることがあります。理由としては漏れ出た膵臓の酵素により全身の血管で炎症が起きてしまうためです。日常から油っぽいものを避け嘔吐や腹痛があったらすぐ動物病院の先生に相談しましょう。
【背景】スコティッシュフォールドはスコティッシュフォールド骨軟骨異形成症(Scottish fold osteochondrodysplasia, SFOCD)と呼ばれる遺伝性疾患を抱えている。
この骨病変は成長期とともに進行が見られなくなる事もあるが、進行し続ける場合もあるようである。
スコは1960年代イギリスで作られた品種である。その後、スコティッシュフォールド同士をかけ合わせると生まれてきた子供で四肢の関節炎を発症する個体が出て歩行困難になる事が分かりさまざまな追跡調査が行われてきた。また垂れ耳のスコ同士の交配は禁じられており、アメリカでは立ち耳の猫とかけ合わせることで上記の関節異常を抑えて品種として確立された。
【原因】
スコのTRPV4という遺伝子(常染色性不完全顕性(優性)遺伝)に異常をきたしており、骨の異常が発生するとされる。
【症状】
発症タイプには骨瘤型と非骨瘤型が知られている。
骨瘤型
・中足骨の湾曲、指骨骨端部構造の異常、踵や手根部の骨瘤形成。尾椎にも出る事がある。
・通常は後肢から始まり、次第に前肢に進む事が多いとされる。
・胸椎、上腕骨や大腿骨・橈骨などの長骨には発生は無い。
・生後1年前後で発生し、症状は進行性です。
・若齢でも疼痛や跛行や歩行困難が見られる。
非骨瘤型
・中手骨や指骨部骨端形状の不鮮明化、手根関節付近の骨形不鮮明化、尾椎には通常発生しない。中足骨の湾曲が見られるが手足のみに限定的である。
・症状は軽度に進行性である。
・一般的に無症状が多い。
【治療】
①外科
一時的な回復は見られたものの過去の世界的報告では概ね48週後以降で再び骨瘤の形成が見られたとするものが多い。
②放射線療法
全身麻酔下で痛みの管理に用いる。
内科
③消炎鎮痛剤
一般に軽症〜中等症に適応。重症では無効。
痛みを抑えることが可能であっても骨瘤そのものの成長は抑制できない。
④消炎鎮痛剤とビスフォスフォネート製剤の併用療法
この方法は人の同様の疾患で用いられ有効性の報告がなされている。
上皮小体は喉あたりにある文字どおり3ミリ以下の小さい組織で、その働きは主にCa、P等の内分泌を管理しています。
代表的なホルモンはパラソルモンでCa(カルシウム)の消化管吸収と骨からの血液への放出を促すホルモンです。このホルモンの分泌が正常に行われない状態となり、結果血液中のCa代謝へ異常をきたしている状態が上皮小体の異常というわけです。
過剰になってしまった場合が『上皮小体機能亢進症』、枯渇などにより低下してしまった場合が『上皮小体機能低下症』と呼ばれています。
では細かくそれらの分類と対策を説明していきたいと思います。
【上皮小体機能亢進症】
1原発性上皮小体機能亢進症
なんらかの原因で上皮小体が機能が過剰なりパラソルモンが増えすぎてしまった状態です。
最も多いのは高齢犬などで発生しうる腫瘍によりパラソルモンが過剰に出てい待っている状態です。
2続発性上皮小体機能亢進症
このパターンの上皮小体機能亢進は亢進なのにCaは正常~低カルシウム血症です。理由は下を読んでみてください。
食事のCa不足、または腎臓が悪くなりcaの異常を起こした状態で原因は上皮小体ではない場合です。
・食事が原因の場合、Caが少なくてP(リン)が多めまたはビタミンDが少ないなります。現代ではまれとなってます。これにより活性型ビタミンD不足→低カルシウム血症→パラソルモン過剰分泌がおきます。
・慢性腎臓疾患の場合、不器用になった腎臓からカルシウムは尿中に失われ、かつリンが上手く尿に出すこ
とが出来なく、相対的に血液中にリンが漂い、低カルシウム傾向となります。これに生体の危機管理セン
ターの一つである上皮小体のパラソルモンが反応し、過剰に分泌し低カルシウムを治そうとします。その
結果、血液は低カルシウム、高パラソルモン血症となります。
治療は実際はほとんどが腎性(=腎性上皮小体機能亢進症)。
そのため慢性腎不全に対する脱水ケア、電解質の補正等の治療を行いながら、貧血管理や消化管異常のケ
アを行います。高リン血症があるならば食事中のリン制限、またはリン吸着剤の併用を行い、Ca,P代謝不
均衡のケアを行います。低カルシウム血症がみらえれたら活性型ビタミンD3製剤やカルシウム製剤の併
用を実施します。この慢性腎不全時にみられる上皮小体ホルモン過剰(腎性上皮小体機能亢進症)は慢性
腎不全をさらに悪化させるためこのカルシウムーリン不均衡の是正は慢性腎不全管理の上でも非常に重要
です。近年、動物医療においてFGF23という成分が高リン血症が現れる前に体内で上昇することがわ
かってきました。腎機能障害がある方で食餌療法を開始するタイミングの目安になり得るため重要です。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間を仕切っている弁(これが僧帽弁)が変性してしまう弁膜疾患です。どの犬種に発生する可能性があります。加齢とともにその発生が増えます。
【原因】
上に書いたように僧帽弁は、心臓の左心房と左心室を区切っている二枚の弁で、心臓が収縮すると心房と心室を閉じて左心房への血液の逆流を防が役割を果たしてます。僧帽弁閉鎖不全症にかかると、弁が変性を起こし完全には閉じきれなくなり心臓が収縮して体の隅々に血液を送ろうとするときに左心房内に逆流してしまう状態となります。血液の逆流すると左心房および肺静脈(左心房に肺から流れてきた血管)の圧が上昇し、肺は左心房に血液をフルで送れなくなるので血液のうっ滞がおこします。それが長く続くことにより心臓のポンプ力が低下し、心不全状態をきたします。また、弁を支えて居る紐のような腱索というものが耐えきれず断裂すると弁はさらにコントロール不能になり、血液の逆流が急に悪化したり、出血して突然死することもある。
【特徴】
すべての犬種にみられる。マルチーズ、シー・ズー、ポメラニアン、プードル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどの小型犬に特に多い。
【症状】
初期は目立つ症状はなく、獣医さんが聴診器を当てて心雑音が聴取されるのみであるが、進むと発咳が認められる事が多い。この咳はおもに、肺のうっ血および肺水腫に起因する。犬は苦しそうに咳をし、運動時や夜間から朝方にかけて激しく続くことが多くなる。また、肺水腫が重度になると舌の色が青紫色になる。このままの状態で放置すると命に関わる。
【予後】
食餌療法(低ナトリウム食の給餌など)、運動制限、薬物療法などの内科療法によって延命することも可能であるが、急激な症状の進行によ、ら呼吸困難に陥り突然死することもある。現在外科的な試みもされている。
犬の胆石はイメージ通りの石の形状より泥の様な岩海苔のようなドロドロしたものが胆嚢内にあるイメージです。もちろんカチカチの石もいます。胆嚢という袋から総胆管という管への胆汁の排泄が悪くなるためにおこる胆汁うっ滞によりドロドロになる事が多いです。そのような犬では肝機能が低下し胆嚢内には胆汁の濃縮した形の胆泥(胆嚢内沈殿物)が貯留していることが多いです。また新陳代謝を司るホルモンの低下や高コレステロール血症も原因となります。
【原因】
胆汁は、肝内にある胆管から集まって胆嚢に一時的に貯められ、濃縮され総胆管という管をへて十二指腸に排出される消化液です。この酵素によって脂を分解したりしてます。この胆汁がうっ滞したり、胆汁成分が変化して胆管や胆嚢の細菌などによって結晶化した胆汁酸塩、タンパク質、マグネシウムなどを主成分とした結石が形成され、これを胆石とよびます。この胆石は胆嚢内(胆嚢胆石)、総胆管内(総胆管胆石)に形成され、まれに肝臓内の胆管(肝内胆石)にもできる結石です。犬では自覚症状を訴えることが少ないため、見逃されがちです。結石が肝内胆管をはじめとする胆道系を閉塞することにより症状が発現します。
【症状】
胆嚢内結石の症状は、その大きさなどにより異なるが、無症状のまま経過することが多いです。たとえば肝臓内の胆管に数多くの結石ができていても犬は腹痛などの症状を訴えないことがあります。しかし、胆嚢内や総胆管にできた結石が移動することによって胆道を刺激した場合、犬は背中を丸めて腹痛を訴えます。また、胆道が結石によって閉塞し、胆汁が十二指腸へ排泄されなければ胆汁は体内に貯留し黄疸がおこり、眼や口腔粘膜などの可視粘膜が黄色みをおびるようになってきます。また尿がとても黄色くなる事も認識されます。その他、元気消失、歩様異常、嘔吐、体重減少などもみられます。胆嚢内または総胆管内の結石は外科手術によって摘出可能であるが、胆嚢炎に対する抗生物質療法と低タンパク食、低コレステロール食を中心とした食餌療法によって結石形成を遅らせることも予防法となります。
ひとこと
胆泥は健康診断や偶然発見され、先生に指摘されることが多いです。高齢で多く見られる傾向もあり、多い病気の一つです。悪化させないのがコツでもありますので対応策を体質からケアして予防していきましょう。
涙は眼を守ってくれる大切な成分で、常に眼球の表面を覆っています。
通常、目で作られた涙は鼻涙管という目と鼻の間を通る管を通って鼻に流れていきます。そのため目からあふれることはありません。
しかし、何らかの原因で涙の生成量が増えたり、鼻涙管が目詰まりを起こしたりして流れなくなると目から溢れ、涙が多いという現象が起こります。
【原因】
1生理現象
目に毛が当たったり何らかの刺激があると、涙がたくさん出てきます(特にトイプー、ヨーキー、シーズー、テリア犬種など)
2病気由来
①睫毛乱棲
まつ毛の生え方が変な方を向いていたり、変な場所から生えてしまうことによって目の表面に刺激を与える病気があります。
②眼瞼内反、眼瞼外反
生まれつきの瞼の形状に問題がある場合で、まぶたそのものが内側に入っていたり外側に反ってしまう病気です。
③角膜炎や結膜炎
黒目の表面を覆っている角膜または瞼裏から白目までの表面を覆っている結膜炎におこる炎症で涙が多くなります。ゴミが入ることや自分でかいたり、物が当たったり目に傷がつくことで症状がでます。
ほかにも、菌やウイルスなどの病原体の感染、アレルギー、涙が少ないことが原因になることがあります。
④ぶどう膜炎
目にあるぶどう膜という膜で起こる炎症で、角膜表層の傷から波及することがあります。
ぶどう膜炎から緑内障(眼の圧力が上がる病気です)が起こることもあります。
⑤緑内障
眼球内にある眼房水という水は水道の蛇口と排水溝の関係のように常に循環してます。何らかの原因で排水溝が目詰まりを起こしたり、蛇口が強く回りすぎてしまうと眼房水が増え眼圧が上昇します。酷くなると失明につながるおそれのある病気なので注意が必要です。
⑥腫瘍
眼球、瞬膜、鼻などに出来た腫瘍が原因となることがあります。
⑦犬のチェリーアイ
⑧鼻涙管閉塞
生まれつき、または何らかの炎症などにより、目から鼻へ涙を通す鼻涙管が閉塞したり狭くなったりすることがあります。
⑨鼻炎
鼻の粘膜が炎症を起こしている状態のことです。
【治療法】
目に対するホコリ、アレルゲン、毛など外的な刺激によって角膜炎や結膜炎が原因となることが多いです。考えられる外的刺激をカットしてみましょう。
鼻炎により目と鼻をつなぐ鼻涙管にも炎症が起きると、鼻涙管が狭くなって涙の流れが悪くなり目から涙があふれるということもあります。
目に傷がついて痛みや違和感で涙が増えてくる事があります。この場合、白目の充血、眼を痛くて開けられなくなるなどで気がつくかもしれません。ワンちゃん猫ちゃんは本能で眼を擦ってしまう事が多いので早めに獣医さんに相談しましょう。まずは応急処置として擦って傷つけないためにエリザベスカラーを装着しておくと良いです。
尿路である腎臓⇨尿管⇨膀胱⇨尿道のいずれかに石が形成された状態です。
結石形成には膀胱炎などの尿路感染症が強く関与しています。尿路に結石が形成されると結石自体の刺激によって尿路に炎症をおこします。また尿の流出路である尿管や尿道に結石がつまると、尿を排出できないため、膀胱破裂あるいは腎不全をおこして死亡する可能性も高いです。
【原因と結石の種類】
尿路結石は、食餌や飲水などから摂取されたミネラル(カルシウム、マグネシウム、リン、尿酸、ケイ酸など)が尿中のタンパク質などと結合して形成されます。
尿路結石の70%を占めるリン酸塩結石(リン酸アンモニウム・マグネシウム=ストルバイト)の形成には細菌感染が関与しており、炎症が生じた結果、尿中に脱落した細胞などまたは細菌そのものが核となって結晶を作り、結石として発達します。
②飲水の減少で、尿量や排尿の回数が低下して尿が濃縮する事で結石形成を助長します。
③ミネラル(マグネシウム、カルシウム、リン酸など)を多く含む食餌を過剰に与えると尿中にもミネラルが多く排泄され結石が出来やすくなります。
④ホルモン、代謝の異常によるもので、先天的な門脈-体循環シャント、慢性の肝障害により血中のアンモニア濃度が高くなる事で尿酸塩結石が生じやすくなります。また、上皮小体ホルモンの過剰分泌によってリン酸カルシウム結石が形成されやすくなります。
⑤犬種で有名な結石としてダルメシアンの尿酸塩結石が形成されやすい傾向にあります。
【症状】
結石が存在する部位、形状などにより症状は変わります。結石の刺激によって痛みを訴え背中を丸めて、さわったり抱き上げようとすると泣き叫び抵抗することがあります。また尿路の粘膜に炎症がおこり頻尿、血尿を呈し、また高率に細菌性膀胱炎や尿道炎を合併します。
簡単に言うと皮膚の化膿性病変の事です。軽症なものでは自然治癒する事も少なくありませんが、免疫力の弱い子や不適切な治療などによりあったする事もあります。
化膿部の深さ、化膿の細菌の種類、基礎疾患の有無などにやり病名と症状が異なります。
【原因】
非衛生的な環境で皮膚が汚染されたり、すり傷や咬み傷などや、不適切なシャンプーなどにより皮膚の表面のバリアがやられると病原細菌が感染して化膿性病変を発生させます。
【分類と特徴】
本症には表層性のものと深層性のものがあります。
表層性
①口唇性(セッター、コッカー、スパニエル)
②顔襞性(短頭種など)
③外陰性膿皮症など
深層性
①趾間性
②若年性膿皮症
【症状】
皮膚が部分的に赤くなり痒みだします。
毛穴だけの小さな紅疹から始まり、ぶつぶつになり、やがて大きくなると写真のように環状の病変(専門用語で表皮小環といいます)になります。多くは全身的に出ることが多いですが、お腹だけとか腋だけという子も多くいます。また症状が進むと、菌が深部に入り腫脹、膿瘍、発熱、疼痛などがみられるようになる事もあります。
【治療と予防】
診断されたら心がける事は、なりやすい体質を上手にコントロールしてあげることです。膿皮症が一番ひどい時期は皮膚にブドウ球菌がたくさんいる状態になっています。1~2%クロルヘキシジンシャンプーを使用して週に2回は洗ってあげましょう(※クロルヘキシジンシャンプーは皮膚の刺激性が欠点となりますので乾燥肌がひどい子は獣医師に相談し他のオーダーメイド療法を組みたてててもらいましょう。)。また必要に応じ抗生物質の内服も検討していきましょう。投与期間は4-6週間が耐性菌の観点からお勧めです。そして症状が安定してきたらシャンプーを皮膚バリア機能を強くしてくれるものに切り替えていき再発しにくい体質を作っていきましょう。どうしても洗えない事情がある場合は局所療法という方法もありますので獣医師に相談ください。
ひとこと
膿皮症は「皮膚バリア機能」と「細菌の増殖」が主なポイントです。皮膚バリア機能はアトピーや脂が多いなどの体質による影響をうけています。バリア機能を落とす原因を抑え、細菌の増殖しにくい環境を作っていく工夫を獣医師に求めてみてください。治療はひどい時期と安定した時期の2段階で組み立てると良いと思います。
眼の中のレンズ(水晶体)は主に水とタンパク質から出来ていて、通常は透明です。なんらかの原因でこの水晶体のタンパク質の構成が乱されると透明性が維持できなくなって白濁します。
【原因と特徴】
犬種としては、コッカー・スパニエル、プードル、ビーグル、アフガン・ハウンド、狆などでの発生が多くみられます。
原因としては、生まれつきのもの(先天性)と生後以降に何らかの原因で生じるもの(後天性)があります。
後天性白内障は老齢性、糖尿病でよくみられる他、外傷性、ホルモン性、中毒性、薬剤性が原因となり得ます。遺伝的にによって6歳齢以前にみられるものもあり若年性白内障と呼びます。
【症状】
白内障は、水晶体の一部または全部が白濁する病気であり、その程度が進めば進むほど白く濁り、視力障害が出てきます。
白内障の程度により①初発、②未熟、③成熟、④過熟に分類されます。
FORLsは破骨細胞に類似した細胞による永久歯の破壊を起こす病気である。
これは猫で最も一般的に良くある歯牙疾患の一つで、犬でも起こりうる。
この病気は慢性進行性で放置しても病気そのものが改善する事はありません。破歯細胞によりエナメル質やセメント質、象牙質、最終的には歯髄腔に蝕みは達し、歯が壊れます。
原因:
現段階では不明です。
歯周病由来、硬いものを噛む事、ビタミ
ンD過剰など仮説あり
ウイルス感染と関連が深いとされる
症状:
下顎第三前臼歯と第一後臼歯が頻度高い
・歯肉炎の類似
・摂食困難
・歯軋り
・涎(時に血混じり)
・リンパ節の腫脹
・食欲低下
・偏食(柔らかい物を選ぶようになる)
・食事を食べ辛そうにする
・涎で前足が汚れている、
・活動性の低下
・グルーミングの欠如
診断:
・血液検査
・ウイルス検査
・歯科用レントゲンによる吸収所見(セメ
ント質→象牙質→歯髄腔と進行)
・特徴的な歯頸部肉眼所見(発赤と腫脹)
(主に歯肉境界)
・歯肉ライン齲歯の窪み
分類:
ステージ1:軽度の歯牙硬組織の喪失(セメント質、またはセメント質とエナメル質)
ステージ2:中等度の歯牙硬組織の喪失(セメント質とエナメル質片方または両方の歯髄腔に及ばない象牙質の喪失がある)
ステージ3:深部歯牙硬組織の喪失(ステージ2が進み、エナメル+セメント+象牙質→歯髄腔喪失まで及ぶ);歯の大部分は形状を保っている。
ステージ4:広範な歯牙硬質組織の喪失(セメント質、エナメルと象牙質の喪失が歯髄腔に及ぶ);歯の大部分が形状を失くしている。
治療:
○現段階では罹患歯の抜歯が治療(60%の症例で治癒、20%で改善)
方法:
①全身麻酔
②気管挿管
③患部の余剰歯肉の除去
④歯頸部露出しラウンドバーで歯槽骨を削ぐ
⑤歯根部露出させ抜歯。
⑥歯根部洗浄後、歯肉をフラップ
※歯を残さない事。
○難治な場合
レーザーによる治療報告はあるが限定的
AZT、クロラムブジル、放射線
○他の報告ある治療法
・グルココルチコイド
・フィッシュオイル
・FIV罹患症例でレバミゾール、インターフェロン
・抗菌剤口腔内洗浄
・ラクトフェリン など
まず膀胱とは、腎臓で作られた尿を貯めておくための袋で、尿道はこれを排出するための導管である。よって腎臓⇨尿管⇨膀胱⇨尿道⇨体外へと排尿が起きます。
犬の外陰部や包皮はつねに外界と接しているため、細菌によって汚染されやすく膀胱炎、尿道炎は逆流して入って入ってきた菌により起こることもあります。細菌は侵入すると初期には粘膜に潜り増殖します。そして慢性化すると粘膜下組織や筋層にまで侵入します。そうなるとなかなか難治性になってしまいます。菌がどこから来るかは雄の場合糞便から包皮から前立腺、膀胱で雌の場合糞便から膣炎子宮蓄膿症から膀胱炎へと発展します。
場合によっては膀胱だけにとどまらず尿管を上がり腎臓で炎症を起こすこともあります(腎盂腎炎や腎炎)
【症状】
膀胱炎の場合、頻尿感、排尿困難、1回の排尿量は少ない傾向になります。排尿時に痛みのために座り込み鳴いたりする事もあります。膿尿、血尿を示す事もあります。膀胱炎では発熱もみられ、痛みのために元気消失、食欲の低下も認めらることもあります。
また尿道炎だと排尿の初期に血尿が出ることが多いです(膀胱炎の血尿は割と後半戦が多いです)。外陰部を舐めて気にしたり、長期に及ぶと尿道の管が狭くなり尿路閉塞を起こしたりします。発熱もみられ、痛みのために元気消失、食欲の低下も認めらることも稀にあります。
【診断】
症状+尿検査+膀胱のX線検査+超音波による検査を行います。検査自体は早く終わります。
【治療】
原因により治療法が異なります。
まず尿路結石由来の場合、結石の対処を早急に行います。ある種の結石は細菌性膀胱炎と密接な関係があることがあるので抗生物質療法も併用することがあります。
また膀胱炎で細菌が尿中に見られた場合、まず抗生物質療法を行いまたは場合によって培養検査を行い菌を特定して適したお薬をピーポイントで使用する事も検討します。
ストレス性に由来した膀胱炎の場合、行動学的治療や環境の改善など提案させていただく事もあります。
便秘はヒトと同じく動物にもあります。
頻度として猫に多く、原因としては
①結腸の拡張(巨大結腸症)
②脱水や老化
③食事
④骨盤疾患(過去の交通事故などによる骨盤骨折など)
が多くみられます。
症状として
・便意がありトイレに長く座るも排便できず苦しむ
・食欲低下
・嘔吐
が多く見られます。
治療としては
①摘便
②薬物療法(緩下剤など)
③食事療法
等があり、重症の場合①~③を併用します。軽度の場合は③から治療反応を確認しながら必要に応じ②を付け加えていくこともあります。
肥満細胞腫は犬猫皮膚や皮下にできる悪性腫瘍の1つです。元々アレルギー細胞の腫瘍なので触ったりするとヒスタミン顆粒やヘパリンを分泌して赤く腫れたりする事がおおいです。
犬の皮膚悪性腫瘍の中で最も多い確率で発生します。
見た目は特徴がなく、初期はイボのようなものだったり、脂肪の塊のようだったり、皮膚炎のように赤くなったりすることもあります。また、大きくなったり小さくなったりする事もあります。皮下に発生するタイプもあり脂肪腫と間違いやすく、気をつけるべきである。通常は大きくなったり赤くなったりする程度で皮膚のしこりと変わりないがまれにその他の症状として胃潰瘍による食欲不振、嘔吐、下痢、血便、吐血などの症状が見られることもあります。血が止まりにくくもなることもあります。
パグはとても多く見られますが悪性度が低い傾向にあります。
【診断】
肥満細胞腫は肉眼で判断できないため、見つかったら腫れ物に針を刺して細胞を顕微鏡で見てみる検査を行います。この検査は痛みがほとんど無いため麻酔をかけずに行えます。先に述べたようにこの腫瘍は普通のしこりより触れたり刺したり良く赤くなるので、検査前には抗ヒスタミン剤を投与して身体に影響を及ぼさないようにする方法をとります。
診断は細胞診で診断可能です。
悪性度のグレード分類は全体を見ないと判断できないので摘出して病理医提出する必要があります。悪性度が大きく3段階に分かれます。またなお皮膚以外にできるものは悪性度の分類は行わず、通常は悪性度の高いものとして治療します。
近くのリンパ節は腫れてなくても転移している事があります。注意するべき点はこの腫瘍はリンパ転移や脾臓肝臓骨髄などに転移する事がある点です。ですので近くのリンパ節は術前に細胞を検査する事をお勧めする事もあります。
【治療】
外科手術
治療で最も重要なのが外科手術です。完全に取り切ることです。一回で確実に仕留める事です。悪性腫瘍なのでなるべくマージンという正常な組織を余白につけて摘出する事をお勧めします。仮に外科切除後の病理組織検査で残ってる可能性がある場合は追加の拡大切除を実施しなくてはなりませんし、リスクが上がります。
そして病理診断でグレード3だった場合、または仮にリンパ節にこの腫瘍がいる事が分かった場合、外科でとることが出来ない場合は外放射線療法や化学療法を追加して根治を目指しましょう。また遠隔転移している症例は予後が悪い傾向にあるので注意が必要となります。さらに発生部位により予後が異なり、口唇部にできたものはリンパ節への初期転移率が高いとされていて、鼠径部、会陰部は尿路などの重要な組織があるために切除しきれない事がある場所である点で注意が必要となります。
C-kitという腫瘍のもつ遺伝子変異を調べ、変異がある場合は再発率が高いとされます。グレードやステージが低いものに関しては外科手術のみで治療できますが、グレード3やC-kit変異ありはステージに関係なく術後化学療法、放射線治療をお勧めします。
放射線療法
放射線治療は、外科とセットで行われ術後に根治を目的に行われますが通常緩和目的としてはあまり行われません。手術が出来ない時に補助的に行う事は稀にあります。それは取れないけど小さくして時間を持たせたい場合などです。また外科での切除が不十分で再手術が困難な場合に適応となります。
化学療法
化学療法は腫瘍がとりきれない場合、または摘出したが病理組織検査の結果、悪性度が極めて高いグレード3だった場合、再発のリスクが高い場合、すでに全身に転移が起こっている場合に用います。ビンブラスチン、プレドニゾロンなどの従来法や分子標的薬であるイマチニブがよく使われます。特にC-kit変異のある症例に対する効果が高く、内服で処方出来て副作用が少ない点で優れています。しこりが2週間で小さくならない場合は効かないと判断し、休薬する必要とします。
眼の眼房という部分を満たしている水が排出できなくなることで、眼球内の圧力(眼圧)が高くなり、障害をおこします。隅角という部位での房水の排出が阻害されて発生します。この状態が緑内障と呼ばれ、失明に及ぶこともあります。
【原因と特徴】
緑内障はバセット・ハウンド、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、スプリンガー・スパニエルなどの犬種でその発生例が多いです。片目ずつ罹患し最終的には両眼性に発症する傾向が多いです。
原因不明の原発性のものと、原因となる疾患がある続発性とに分類されます。
レンズ脱臼、前ブドウ膜炎、外傷、また腫瘍性疾患などは原因となり得ます。
※原発性閉塞性(PACG)が最も多いです。
【症状】
犬では一般的に激しい痛みを伴って発症することが多く、視野障害から末期には視力低下、放置すれば視力消失することもあります。視覚の有無は急性では回復が見込め、慢性型では視力の回復は見込めない。眼圧の上昇とそのほか、角膜浮腫、上強膜血管の充血(角膜輪部の少し短い血管の充血)、散瞳、内皮性角膜浮腫、対光反射の減弱や消失、視覚障害などがみられます。
【今後掲載予定】
猫の頭部脱毛に関する一つ診療のヒントを載せておきます。
A【スポット部位の痒みと脱毛】
①一過性外傷
②真菌症(カビ)
③細菌性皮膚炎(猫はまれ)
④擦過傷
⑤毛玉や毛根からまとめて抜けた跡
⑥皮膚腫瘍
⑦全身性の疾患の一部発症
⑧吸血昆虫による
⑨まれに精神性
B【頭部の痒み】
①真菌症
②食物アレルギー
③甲状腺機能亢進
④ゾクリュウセイ皮膚炎 など
例えばこのようにして診断します。
A②+B①→真菌症
A⑦+B②→食物アレルギー
A⑦+B③→甲状腺
その他→一過性の掻きむしり
という可能性がたいパターンです。
A②+B①→真菌症
なので猫は皮膚糸状菌との相性がバッチリで犬と違い全身性に持っていてもあまり発症しない傾向にあり皮膚障害を起こした事がある子で、しばしば全身の角質(フケ)と毛をサンプルとして検査すると陽性の子がいます。今回いただいている軟膏を塗布して落ち着いて違う部位で繰り返し出てしまったとして検査を余儀なくされた場合、培養サンプルの採取は薬を塗ってしまっている禿げている場所以外からも全身のブラシでとれた毛と角質で大丈夫です。その場合しっかりと角質を擦り取る事がコツとなります。
A⑦+B②→食物アレルギー
猫の食物アレルギーは頭部掻痒症候群として、頭部から首に出やすい傾向にあります。経験上かなり慢性的な発症であるケースが多いのと、割とダイナミックな痒みが出る事が多いです。最近食事やおやつを変えた、過去に顔に赤みを起こした事があったり痒みを起こした事があるタイプまたは呼吸器消化器の症状で病院にかかった事がある子で食物アレルギーを指摘された事がある子は注意してあげてください。
A⑦+B③→甲状腺
甲状腺は部位が異なるため可能性低いと思います。高齢で発情様の鳴き声と興奮や過剰な食欲、痩せるなどがあれば注意が必要ですが経験上耳と目の間に発症する子をよくみます。
その他→一過性の掻きむしり
ちょっとした刺激を受けた皮膚に急な痒みを起こす事は人もありますよね。この場合は同じ部位やその他の部位でも繰り返さないのが特徴です。