クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)はお腹にある副腎という臓器でステロイドホルモンを作りすぎてしまい多飲多尿、お腹が出っ張ってくる、皮膚病が増え薄っぺらくなる、呼吸頻度が増えハァハァする(パンティング)などの症状を起こします。
また身体ではステロイドホルモンの増加により肝機能障害、心臓への負担の増加、血栓を作りやすくなるなどの不具合も生じていく厄介な病気です。
この病気には成り立ちが2つあり副腎への脳からの指令過剰(下垂体性=PDH)、副腎そのものが腫瘍化している(副腎性=AT)があり、犬では多くが下垂体由来です。副腎が両側腫れている時神経症状を伴うまたは比較的若くMRI検査を許容する場合はMRIで下垂体腺腫を証明することもあります。

この子は水をたくさん飲む様になりお腹が腫れてパンティングという呼吸が目立つという事で来院された15歳ダックスです。
血液検査でALP>12250u/L、超音波画像診断で両側性の副腎肥大が見られACTH刺激試験でコルチゾールの異常高値が見られたため下垂体性副腎皮質機能亢進症と仮診断しトリロスタン1mg/kg 1日1回から開始した2週間おきに血液を確認し薬の量を調整しながら治療を行なっております。

副腎の画像診断において本ケースの様に両側性の肥大のケースでは同じ様に副腎に形成される腫瘤のうち褐色細胞腫で5%ほど両側性肥大を呈したと報告があるため臨床兆候に注意が必要です。


糖尿病

日本猫14歳。最近痩せてきて飲水量&尿量が増えたと来院。血液検査と尿検査から糖尿病と診断した。インスリンと食事療法で維持している


非定型アジソン病

他院にて点滴治療を2週間行ったが悪化してショック状態で運ばれてきたトイプー14歳。
低血糖による昏睡、急性胆道肝炎、三尖弁逆流、僧帽弁閉鎖不全、肺動脈弁逆流、大動脈弁逆流をていし、急性胆道肝炎の治療を行い、集中治療後安定期に副腎皮質ホルモンを再度検査した低値であり、電解質に異常をきたしていない点から非定型アジソンの疑いありとし、コートリルでのケアを開始した。8ヶ月たった現在も状態は安定している。

原発性上皮小体機能低下症

7歳11ヶ月のイタリアングレーハウンドがベットから飛び降り10分間痙攣発作のような足を突っ張ったまま立てなくなる状態になったことを主訴に来院。

神経学的検査法、画像診断、血液検査から低カルシウム血症(ALB3.2g/dl.Ca8.1mg/dl.P1.8mg/dl)が確認された。この症例においては血中Ca濃度の低下は重度ではないものの鑑別が必要と評価し上皮小体機能確認のためイオン化Ca、intactPTHを実施いたしました。

結果イオン化Ca1.13mmol/L(犬基準値1.24-1.56)、intactPTH2.2pg/ml(犬基準値8-35)であったことから原発性上皮小体機能低下症の可能性と診断しました。

治療としてカルシトリオール0.025-0.04μg/kg、沈降炭酸カルシウム70-180mg/kg/日を処方し、カルシウム濃度が安定したのちカルシトリオールのみの投与にして経過を見ている。
カルシトリオールおよびカルシウム製剤投与後、2年経過するが痙攣様の異常は一度も出ていない。

ビタミンD製剤の選択は変換の必要性を重点として考えると良い。腎不全がある症例ではカルシトリオールや1.25(OH)2D類似体を選択する。腎不全がなければ変換出来るためコレカルシフェロールの様な変換が必要な薬でも良い。



臨床において低カルシウム血症は遭遇することが割とあるものであるが、よくあるものの鑑別診断として

・原発性上皮小体低下症
・栄養性上皮小体低下症
・急性膵炎
・腎不全
・低Mg血症
・テタニー
・エチレングリコール中毒
・リンの投与
・腫瘍溶解症候群
・低アルブミン血症
などがあり、全て鑑別の上診断する。