猫の急性腎不全(AKF)

ロシアンブルー2歳が嘔吐を主訴に来院された。当院他獣医師の行った血液検査の結果、急性腎不全(BUN208,CRE22)であったため、治療を依頼された。腹膜透析カテーテル挿入術を行った。

腹膜透析カテーテル術の実施

術後、腹膜透析を実施し元気さを取り戻した

透析開始後、排尿が確認され、3日で数値は半減し、慢性腎不全への移行を食い止めることができた。写真は1週間経過した時のもの。透析チューブが付いているためマナーバンドをお腹につけている。 活発にジャンプし、美しい眼光が復活した。

 

 

↑上図は透析結果解析ゲラフ。透析実施後、数値の大幅の改善がみられる

透析液。左は入れる前。右はお腹に透析液挿入後30分して抜いた後。左右の色と透明度の違いがわかる(血液中の不純物が透析液に析出してきている)

大変だった時期から半年、透析なしでも元気いっぱいで定期健診に通っている。毛艶も良くなり、体重も順調に増えている。


膀胱結石

日本猫7歳♂、半年頻尿、血尿を繰り返し来院した。レントゲン検査と超音波検査の結果膀胱結石と診断し、膀胱切開を行い結石を摘出した。手術後は頻繁に繰り返していた頻尿、血尿もなくなった。現在療法食で維持している。


エチレングリコール中毒

一昨日、保冷剤を食べてしまったトイプードルが来院した。保冷剤にはエチレングリコールという中毒性分が含まれる事があるため、血液検査を実施したところ急性腎不全が示唆され、尿検査でシュウ酸カルシウム結石および強度酸性尿であったため、EG急性腎不全(エチレングリコール性急性腎不全)を疑い、7%エタノール静脈注射療法と腹膜透析を実施した。超音波画像所見では、EG急性腎不全でよくみられる腎皮質白色化エコー所見がみられた。透析実施5日後劇的改善がみられ、7年経た現在も元気に定期健診に来院されている。


犬の子宮蓄膿症

食欲なく熱っぽいというチワワ♀7歳。腹部超音波検査で子宮蓄膿症と診断し、即日開腹手術を行った。この病気は子宮がホルモンバランスの変化の影響で免疫防御能力が低下しやすい時期(発情後)に発症しやすい子宮に膿がたまってしまう疾患で、命にかかわることも多い。


猫の子宮蓄膿症1

ソマリ4歳♀。嘔吐を主訴に他院で診察を受け、部分腸閉塞の疑いと診断されバリウム検査を受けたが原因分からず当院へ転院してきた。左右側腹部の腫脹が顕著であったため、超音波画像診断を行ったところ子宮が2㎝以上に膨らんでおり、かつ排膿が見られなかったため、閉塞性子宮蓄膿症と診断し、緊急開腹し子宮卵巣全摘出術を行った。術後の経過も良く、翌日には退院し、回復した。


猫の子宮蓄膿症2

日本猫7歳。一週間前から食欲不振で腹部が腫れていると来院。触診で両側腹部が膨満していることが確認されてため、超音波画像診断を実施。閉塞性子宮蓄膿症と診断し、緊急開腹による子宮卵巣全摘出術を実施した。術後経過も良好で翌々日退院した。猫の子宮蓄膿症の経験上最大であった。。


PKD(猫の多発性嚢胞腎)

頻尿を主訴に来院されたマンチカン9歳。超音波画像診断を実施したところ両側腎臓に多数腎嚢胞が形成されていたため、腎臓の予備能力の精査およに腎臓に対する内科療法および腎臓の病理検査、遺伝子検査の実施を提示したところ、腎臓ケアのみ希望されたため、ACE阻害薬療法と食事療法を行っている


FLUTD(猫下部尿路疾患)

半日前よりトイレで排尿姿勢のまま出ていない様子の日本猫♂10歳が来院された。尿路に対する超音波検査および触診を実施したところ、陰茎の先端が舐め崩しになっていた。オーナーへ説明し、血液検査と超音波による腎機能検査を実施後、尿道カテーテルを実施した。

尿道カテーテル留置の様子。尿道カテーテル留置を行い、抗生物質、消炎剤およびエリザベスカラーを行い一週間後、治癒した。


尿管閉塞(水尿管)

4歳に日本猫、かかりつけ医で手術できないと遠方より手術を希望され紹介状持参で来院。症状は嘔吐、元気消失で血液検査上軽度腎機能低下、超音波画像検査で右腎盂拡張と近位尿管(腎臓という体内の毒物を尿にする臓器と膀胱という尿を一時ためおく臓器をつなぐ管)が閉塞している所見が見られたため緊急開腹し、尿管に詰まった結石を摘出し、ノーインプラントにて尿管再建を実施した。術後良好でかかりつけ医に定期チェック通院されているとのことである。

このようなケースではまず術中腎盂尿培養を実施し、そして術後尿結石分析結果に応じ適切な食餌療法をお勧めしている。


尿道閉塞(尿閉)

雄猫にとても多い尿道結石による尿路閉塞。尿道は膀胱~外までの管でここが目詰まり起こすことで排尿ができなくなってしまう。これは雄猫に多く理由は陰茎の尿道という管が極端に細く、結石などが詰まりやすいことが原因となる。

まずカテーテルを用い排尿を促し体を救済し、緊急事態を解除して閉塞の原因をさぐり再発防止策を練る事が重要となる。再発が重度で食餌療法に反応が乏しい場合はウロストミー(会陰尿道造瘻)が救済策となるが、極力内科療法での維持を計ったほうが体に優しい。


膀胱内結石

定期的健康診断に来院されているアメリカンショートヘア7歳雄。健康診断にて膀胱内に膀胱結石(←写真白い金平糖上の物体)が確認された。尿検査の性状からシュウ酸caが疑われ一定期間の療法食治療実施後、外科的に摘出し再発防止策として療法食でのケアと定期的尿検査および超音波検査を実施してる。


膀胱内腫瘍(移行上皮癌)

半年前からの血尿を主訴に来院された12歳コリー。

膀胱内尾側部に巨大腫瘤が形成されたため、カテーテル生検から移行上皮癌と診断し、膀胱摘出術および尿路変路術を実施し抗がん剤と分子標的薬療法を実施し定期的な検査に来院されている。


卵巣遺残症

数年前にかかりつけで避妊をしたが発情様症状が出るという白ポメラニアン4歳が来院。
各種検査を行い、プロゲステロン血中濃度とヒートは終わっていたが念のためエストラジオール血中濃度の検査を行い、基準値を超えていたためが超音波画像診断で卵巣と思われるものを確認した。CTを提示し同様の所見であったため、開腹摘出を実施し、発情を起こさなくなった。(追記:猫ではhCG注射後のエストラジオール検査が推奨されている2020)


尿管閉塞

数日前から嘔吐が見られ高いところに登らなくなった事を主訴に来院されたアメショ猫3歳。
血液検査から重度の閉塞性腎不全を疑い、レントゲンエコー検査から左尿管(腎臓と膀胱を繋ぐ管)の閉塞が疑われたため緊急開腹手術を実施した。
(↑上記写真の左の黒いところが尿が詰まった結果溜まった部分で、右が術後黒い領域が減っているのがわかる)

左尿管の膀胱に近いエリア(尿管膀胱接合部)に狭窄が見られたため尿管を切断し膀胱に繋ぎ直す手術(膀胱尿管吻合術)を行った。吻合部の狭窄を防ぐため一時的にステントを留置して閉腹した。

この症例は術後腎臓から尿が漏れ出る症状が見られたため再度開腹を行い閉鎖したがそれ以降、腎不全は完全に改善し尿検査など定期検診を行いながらチェックし、通常の生活を送れている。

神経障害性排尿障害

急性脊髄損傷から両側後肢不全麻痺(動かせるけど立てないレベル)と上位神経障害による排尿障害(上位由来は膀胱を押しても出にくいパターン)を起こした猫。
簡単に言うと脊髄のダメージから膀胱の感覚を失ってしまったり、排尿時に膀胱を収縮させる筋肉を動かす神経の働きに問題が生じたりという原因である。

治療のセオリーとしては『定期的な排尿の確保+同時に原因の探索』である。

1:原因疾患
2:排尿治療薬剤
・α遮断薬
・骨格筋弛緩薬
・副交感神経刺激薬
1と2と併用して
3:排尿処置
①膀胱瘻形成術
②尿道カテーテル留置
③1日2回のカテーテル導尿
を説明して1+2+3③を希望されたため
カテーテル導尿を開始。

一般的に上の方の神経障害(UMNs)は圧迫はリスクがあるため、しばらくは薬剤療法とカテーテルを行い、膀胱出口の筋群の緊張を見ながら時間を置いて試みると良い。それまではご家族への無菌的カテーテルトレーニングが必要となる。