ハムスターの感染性皮膚疾患は細菌真菌寄生虫が多い。しかし単純にそれが原因という事より背景にアレルギー、内臓疾患、内分泌疾患、栄養障害がかかわって発症しているケースが多い。
脱毛の原因として低たんぱく(16%以下)の食事を長期的に与えられているケースをよく見る。
そのほかに体調がよくない事から自らグルーミングを行えず被毛がぼさぼさとなることもある。
あとそのようなケースでは歯の不正咬合が無いか必ず確認する事。
獣医師が必ず行うべき鑑別は
・細菌性-疾患
・皮膚糸状菌症
・ニキビダニ症
・アレルギー性皮膚疾患である。
ゴールデンハムスターは体幹腰背部に、ドワーフハ
ムスターは体幹腹側正中部と両口角部に臭腺がみられ、これを膿皮症や新生物と間違えてはならない。
皮膚疾患は感染症では細菌、真菌、寄生虫によるものが多い。しかし、原因が単純である症例は少なく、内臓疾患、内分泌疾患、栄養疾患等が複雑に関与していることが多い。
脱毛の原因として低番白質(16%以下)の食餌が長期間給解されていることも多い。
虫卵の大きさは44~62x30~55pmで、六釣幼虫を含んでいる。本来はネズミの条虫であるが、偶発的にヒトやサルに寄生するので注意が必要である。中間宿主を介さない直接感染も起こり得る。
症状:元気喪失、下論、体重減少、腸閉塞等である。
診断:難便検査による虫明の検出を行う。虫卵の卵殻と幼虫役殻の間にはフィラメント状の構造物が
みられる。
治療:ブラジクアンテル等の投与を行う。中間宿主を駆除する。食業する個体は自家感染を防止できない。
症状:一般に無症状で、重度感染で軟便、下物、体重減少、枝毛祖剛等がみられる。
診断:セロファンテープ法による虫卵の発見、または・
排便時に糞地に成虫が付着する。
治療:イベルメクチンやフェンベンダゾール等の駆虫
薬の投与を行う。
離乳したばかりの個体や長毛品種の発生が多い。2〜3日で死亡することもある。大人も罹患し下痢で肛門周囲が濡れて汚れた状態を指す。多くが細菌性腸炎に由来する。
原因:病態は不明であるが、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫、食餌、ストレス(離乳時、過密飼育等)
等の原因が考えられる。
代表的なものとして
・不適切な抗生剤によるクロストリジウムディフィルシルの増殖
・Lawsonia intracellularis感染による致死的増殖性回腸炎
・Clostridium piliforme(ティザー菌)感染による下痢、削痩、被毛そごう、突然死。
症状:黄色下痢、響曲姿勢、脱水、削痩、体重減少、食欲不振等である。腸閉塞、直腸脱、腹膜炎、あるいは肝膿瘍を引き起こすこともある。どれも死亡率が高い。
診断:糞便検査での寄生虫等の確認や、菌分離等を行
う。
治療:原則的に抗生物質の投与を行う。エンフロキサ
シン、トリメトプリム・サルファジアジンが有効とされている。支持療法して整腸剤(ビオRを5キロあたり1錠)等の投与、補液(LR50ml/kg SC)、保温(20℃)を行う。予防としてストレス要因を減らし、家族性素因のないものを選ぶことが重要である。
原因がわかっているものについては
・不適切な抗生剤使用⇒投与中止と支持療法
・Lawsonia intracellularis感染には支持療法、テトラサイクリン10mg/kg BID 7daysまたはERFX10mg/kg BID 7daysまたはST30mg/kg BID 7days
・Clostridium piliforme(ティザー菌)感染なら支持療法、テトラサイクリン10mg/kg BID 30daysだがティザー菌感染は予後不良多い。
トリコモナスは真の病原性は明らかではない。ジアルジアの分類には不確定要素が多いが、ハムスターには Giardia murisがみられる。G. murisは7~13✕5~10pmでマウス、ラット、ハムスターの小腸に寄生する。組織侵入性がないので、不頭性感染であるといわれるが、寄生部位の腸粘膜に吸盤を用いて吸着するため吸収面積の減少をきたし、脂肪吸収阻害等の消化器症状がみられる。
■多種の原虫が検出され、同定が困難
鏡検での同定は難しい)
■健常体からも原虫は検出されることがある
(常在プロトゾアの可能性)
■投薬しても完全駆虫できないことが多い
(ハムスターはSPF化ができない)
■軟便や下痢が治らない
(原虫増殖を引き起こしている他要因を追究する)
・
症状:不顕性感染の症例が多い。軽症例では軟便、体重減少等である。重症例では下痢、食欲不振、
痩削、彼毛粗剛等を呈する。
診断:トリコモナスは糞便検査による栄養体を検出する。ジアルジアは糞便検査で下痢便中には栄養
体が、正常便中にはシストが排出される。後者
は遠心沈殿法やショ糖遠心浮遊法で検出する。
治療:メトロニダゾール等の抗原虫剤の投与を行う。
重症例では支持療法として整腸剤も投与する。
■抗原虫薬
■メトロニダソール:20-60mg/kg BID-TID PO
■チニダゾール:同上
■フェンベンダゾール:20-50mg/kg SID PO 5日間
■食餌療法
原因:先天的な下当の成長不全もしくは、齧癖等の後天的な原因等による。
症状:メッシュケージで飼育された場合、ケージの癖により切歯の碳折がみられ、歯根付近の歯肉から出血、炎症がみられる。歯根膜が変形しはじめ、歯の形成に障害がおよび歯冠形態が不正
となる。特に下類の切歯が彼折し、根が閉じて成長が停止すると、上顎の切歯は摩粍されないため過長や舞曲し、大きく変形がみられる症例では上顎切歯が口唇もしくは口蓋を貫通することもある。
診断:切歯の視診、エックス線検査により根の確認を行う。歯根が閉じて感染がみられる症例は膿瘍、石灰化がみられることもある。骨吸収や骨髄炎がみられる症例は予後不良である。
治療:根病巣は抜歯以外は治療法がない。過長する切歯は定期的に切断する。支持療法として柔らかい物、ふやかしたハムスターペレット、野菜や果物のすりおろし等を中心に給餌を行うとよい。
発生:ケージ内で損傷したり、咬傷での発生が多い。
また不衛生な飼育環境が主な原因である。
.I: Staphylococcus spp., Streptococcus spp.
Escherichia. coli, Pasuteurella pneumotropica
等の感染による。
分類:①ブドウ球菌感染症
②湿性皮膚炎
③皮膚乳頭腫症
④菌腫
症状:皮下膿瘍は膨隆性の発疹がみられる。ドワーフ
ハムスターでは眼瞼や結膜に麦粒腫の膿疱を形成したり、体幹腹部に菌塊を取り囲む菌腫を形成する。ゴールデンハムスターでは雌の陰部の横に膿瘍を形成する症例もみられる。細菌性皮膚炎はイヌ、ネコと同様に皮疹として脱毛、発赤等がみられ、重症例ではびらんに至る。
・湿性皮膚炎は肥満個体の腋下に好発する。
・ブドウ球菌感染症では眼周囲、鼻鏡、四肢に良く出る。ピエロ顔やグローブなどと言われる。
・皮膚乳頭腫症は四肢(腋下、鼠径)に好発する扁平上皮の良性増殖性変化である。二次的に真菌感染しやすい。
・菌腫はジャンガリアンハムスターに好発し体幹腹側〜鼠径に多発する皮下膿疱
診断:特徴的な皮疹や患部からの菌分離で診断する。
治療:原則的には抗生物質の投与を行う。膿瘍等では切開、排膿等の外科処置が必要となる。
■抗生物質(ニューキノロン系/クロラムフェニコール)
■アミノ酸製剤(シスチン・メチオニン)
■ビタミン製剤
■副腎皮質ホルモン
■抗ヒスタミン剤
■エンロフロキサシン:5-20mg/kg Po SC SID 幼体禁忌
■シプロフロキサシン:7-20mg/kg PO BID
■クロラムフェニュール:30-50mg/kg SC IM BID
■トリメトプリム・サルファ剤:15-30mg/kg Po BID
■テトラサイクリン:10-20mg/kg Po BID-TID
■クロルテトラサキクリン:20mg/kg SC IM BID
■オキシテトラサイクリン:16mg/kg SC SID
■ドキシサイクリン:2.5-5mg/kg Po BID 幼体/妊娠個体禁忌
■メトロニダゾール:20-60mg/kg Po BID-TID
■ネオマイシン:100mg/kg PO SiD
原因:Trichophyton属(白癬菌属)Microsporum属
(小胞子菌属) 等の感染による。ハムスターでは主にTrichophyton mentagrophytesの感染が多い。発生要因として不適切な環境飼育や栄養素の不均衡、ストレス等も関与する。
症状:頸背部、頭頸部そして拡大すると全身に不整形に脱毛、紅斑、鱗層を呈し、掻痒はあまりみられない。
診断:毛検査により夜毛を10%KOH液で処理し、鏡
検で大分生子を確認するか、培養を行う。
治療:グルセオフルビン等抗真菌剤の投与、もしくは患部を剃毛し、抗真菌剤の局所療法を行う。老齢により免疫低下した症例では予後不良である。
発生:感染は哺乳時に母親から子供に伝播し、生涯、皮膚に常在すると考えられている。発病は通常1歳以上であり、ストレス、感染症、栄養不良等による皮膚免疫能の低下、また腫瘍、内臓疾患等の体力低下が発生に大きく関与する。
原因:Demodex aurati (毛包寄生で葉巻型をしていて病原性強い)、Demodex criceti (角質寄生で寸胴で非病原性)の2種類の寄生による。毛包虫の卵からの一生は14日。
ゴールデンハムスターは多くの個体でキャリア、免疫機能低下で発症する事が多い。(完治する症例と完治困難な症例の判断は困難である。時として不治の病。)
症状:主に脱毛型と落屑型がある。掻痒性のない特徴的な脱毛や薄毛を伴う皮疹が体幹背側の腰部から臀部、大腿部にかけて認められる場合と、患部に発赤、、鱗層、落層、痂皮色素沈着等を生じ、掻痒がみられる場合がある。
診断:毛検査によるニキビダニの成虫の検出を行う。毛抜き検査が良い。皮膚掻爬は危ないから避ける。
治療:基本的にはイベルメクチン200-400μg/kg POの7〜10日間隔の連続投与もしくは殺ダニ剤の外用を行う。データによっては10-14日毎とすると投与法があるためよく調べるべきである。単純脱毛型であればイベルメクチンで発毛する確率が高い。重度の免疫低下の症例では基礎疾患の治療も必要で、イベルメクチンの単独投与では症状は改善しない。またレボリューション(セラメクチン)も昆虫神経遮断薬として使えるとの報告もある。アミトラズ薬浴1.4ml/L 2週間毎 3-6回も効果ある。
難治性の場合、ダニが増える他の要素(アレルギーや皮膚型リンパ腫)があると殺ダニ剤のみでは治せない。
原因:吸引、接触(床材等)、食餌等の様々なアレルゲンが主な原因で、代謝的(内分泌、内臓疾患)、栄養的な要因等も発生に 関与すると推測され
症状:皮疹は体幹腹側を中心に円形状や広範囲な紅
斑、脱毛、掻痒等がみられる。
診断:特徴的な皮疹、発赤、脱毛、掻痒で診断するが、病理組織学的検査、治療的診断としてのステロイド剤、抗ヒスタミン剤の投与もある。(ハムスターではアトピー、アレルギーの定義が未確立)
病理所見として
・表皮の肥厚
・真皮のリンパ球やマクロファージ、好酸球浸潤
確定診断は病理組織学的検査を行う。
治療:アレルゲン除去および抗ヒスタミン剤やステロ
イド剤の投与を行う。
備考:木材チップは喘息や鼻炎、結膜炎、肝不全、アレルギーに関与
・高齢個体にみられ、多くが進行性であり、治療に反応しない症例も多い。患畜のクオリティーオブライフ(生活の質)を維持することを考慮すべきであり、投薬以外にも高齢の個体向けの食餌をはじめとする飼育環境の整備も必要である。
・遺伝性 ゴールデンハムスターはHCM.DCMを発生
発生:1.5歳以上の高線個体に多発する。アミロイド
ーシス、販血症、原管炎が血栓形成に関係し、心臓疾患の発症要因として挙げられている。
原因:老齢性疾患であり、遺伝、環境、食解、合併症等により発症の有無や進行が異なる。血栓性の心筋症が多くみられる。
症状:呼吸促迫〜呼吸困難、努力呼吸、体重減少、削痩、運動不耐性〜嗜眠、元気消失、食欲不振、腹水胸水、浮腫等である。発咳はである。
診断:エックス線検査で心陰影拡大、気管挙上、胸水
等を確認する。聴診では心臓雑音と肺雑音の鑑
別は困難であるので、胸部の雑音として確認する。超音波検査や心電図はハムスターに対して極度のストレスとなるので、積極的には行わない。
【New York Association (NYHA) 心機能】
○NYHA1:心疾患を有するが、無症状 AGE阻害薬
○NYHA2生活に少しの制限(呼吸促拍/困難)はあるが、安静にすると楽に生活できるACE阻害薬・利尿薬・ジギタリス剤
○NYHA3
生活に強い制限(呼吸促拍/困難・運動不耐性・L眠)はあるが、安静にすると楽に生活できる(ACE阻害薬・利尿薬・
○NYHA 4
心疾患を有し、常時心不全症状が認められる
ACE阻害薬・利尿薬・ジギタリス剤・その他強心剤
治療:利尿剤、血管拡張剤、強心剤等を適宜に選択して投与する。重症例では酸素吸入も必要となる。
運動制限として回し車やメッシュケージを取り除き、食餌療法として低塩分、低脂肪、高繊維
質の食餌、野菜、乾草等を多給するとよい。
■強心剤
●ジゴキシン:0.05-0.1mg/kg Po BID [Adamcak and Otten. 2000]
■利尿剤
■カルシウム拮抗薬
●ベラバミル:0.25-0.5mg/SC4週間以上[Kuntze.1992]
■β遮断薬
■ACE阻害薬
■漢方
原因:アンモニア臭や異物による刺激、細菌やウイルス感染、切歯の根病巣が主な原因となる。またハムスターは全身の状態が悪いと両眼に眼脂がみられる。
症状:結膜に充血、浮腫がみられ、膿性の眼脂を呈する。また流涙により、眼周囲の枝毛が持続的に濡れた状態になると、湿性の皮膚炎になり脱毛もみられる。ドワーフハムスター特有の眼瞼や結膜に小さな麦粒腫の膿疱を呈する。
診断:特徴的な症状から診断する。感染症は眼脂の菌分離を行い、根病巣はエックス線検査で確認する。
治療:眼への刺激が問題であれば、塵埃の原因となる床敷素材を変更したり、掃除によりアンモニア臭を軽減する。症状に適した抗生物質やステロィド等の点眼薬を投与する。