日本猫9カ月、昨日から鼻水がでて、眼を引っ掻いているという主訴で来院された。FVR(猫ウイルス性鼻気管支炎)に罹患していた。角膜損傷と鼻涙管閉塞の確認のためフルオルセイン角膜染色を行い、異常を認めなかった。抗生物質内服とインターフェロン点眼で一週間で治癒した。
猫においては外傷や猫ウイルス性鼻気管炎にゆらいする例も多いため、よく原因を把握してあげてほしい。
2歳ヨークシャテリア♂。一週間前眼を気にして気になったため、他動物病院を受診し異常なしと診断をうけ、経過観察していた。その後眼が球に白くなり当院を受診。来院の段階では白内障および結膜に炎症があり、炎症性白内障の可能性があったため、眼球超音波検査を実施。現在治療中
治療3日後の経過観察。改善が見られ始めた
3~4日前から目が赤くなったというパピヨン11か月が来院された。来院時眼の内側(鼻より)の瞬膜腺が出ておりチェリーアイと診断。点眼薬、内服薬を処方し、外科手術を検討してもらっている(経験則で内科的治療法に反応しない疾患のため)。時として非観血的な整復法で一時的な緩和を認めるが、しっかり治すのであれば再発予防から手術をお勧めする。
角膜潰瘍とは眼球の表層を保護してくれている角膜という膜が何らかの理由でこすれて傷ついてしまった状態であり、非常に多い疾患である。治療は軽度の角膜潰瘍例ではエリザベスカラー装着によるさらなる傷の予防策と、ヒアルロン酸点眼および抗生物質、ヒアルロン酸分解酵素阻害薬点眼等を用い治療していく。稀にある重度の深い角膜潰瘍また再発性角膜潰瘍例では自己血清点眼療法や瞬膜フラップ、結膜フラップ、人工角膜等を用いる。
また角膜潰瘍が繰り返していてなかなか落ち着かないケースでは涙膜の異常がないか、または外的刺激がないかの精査、点眼薬の見直し(角膜刺激性や防腐剤の有無)、潰瘍部位の不良肉芽(傷のある組織が治る力を失っていないか)等をしっかり見ていき治療プランを立ててあげることが早い治癒へのカギとなる。
この子は12歳コーギーで他院にて難治性と診断され来院された。再発角膜潰瘍として各種検査を実施し自己血清点眼療法により完治した。
他院にて二カ月前に角膜炎と診断されエリザベスカラー生活を続け治療するも改善なく来院された。来院時、すでに視覚を失い前ぶどう膜炎を併発しIOPも上昇していたため、ANA(抗核抗体)および細菌培養検査および菌感受性試験を実施し、マンニトールにてIOPを低下させ(痛みの緩和的)、点眼薬(角膜潰瘍治療薬+ヒアルロン酸点眼液+多剤抗生物質点眼薬+PG製剤)と全身的抗生物質療法実施したがデスメ膜瘤がみられたため、結膜フラップと第三眼瞼フラップ術、人工角膜を提示。『第三眼瞼フラップ術』を実施し、血液から抽出した自己血清点眼液療法を試みた。
眼球周囲の瞼部分の毛を剃毛し、術野を消毒します。
まず上瞼から3-0ナイロン縫合糸を通します。
第三眼瞼にT状軟骨を拾いながら縫合糸を通します。
次に再度上瞼の外眼角近くに縫合糸を通します。そしてシルコンデバイスに糸を通したら結紮します。これにより第三眼瞼は外眼角方向へ牽引され、それによって角膜表面を被覆し、常に湿潤な状態にしてあげることにより角膜再生を促します。コツは縫合中角膜を外科用縫合針で傷つけないこと、また第三眼瞼を縫合した糸が角膜側へ接触しないような縫合を行う事である。通常1~2週間後に抜糸し、角膜の状況を確認する。コンタクトレンズを応用した被覆法もあり、無麻酔での実施が可能であるため頻用されるが外れやすい等の問題から確実性では『第三眼瞼フラップ術』が頻用される
片目を1週間前から痛がるという主訴で来院された。眼球の外観(牛眼)から緑内障という眼の圧力が上がってしまう病気を疑い角膜染色検査(角膜の表面に傷がないか:FR)と涙液量検査(ドライアイ持ちではないかの検査:シルマーティア)及び眼圧測定検査、対光検査(光覚という光を感じる反応があるか)、視覚試験(視力が残されてるか)を実施。
眼圧は72と極端に高く、視覚は失われており光に対する縮瞳は弱かった。眼球に対する超音波画像診断を行ったところレンズの脱臼、眼の中の腫瘍などは確認されなかったため、慢性原発性隅角閉塞性緑内障と診断し治療を開始した。
緑内障は大きく急性と慢性に分かれ、視力の温存が望まれる急性に対し慢性は治療指針として継続的高眼圧による痛みのケアなどが軸となる。
そのため緑内障は早期発見が大切であり目に違和感を感じている子を見たらすぐにかかりつけにかかって欲しい。