神経膠腫(グリオーマ)

フレンチブルドックに見られた右大脳全域のグリオーマ
フレンチブルドックに見られた右大脳全域のグリオーマ

 

 

【グリオーマとは?】

 神経膠腫は、脳または脊髄髄内で出来た神経腫瘍のうち、グリア細胞(神経膠細胞)が腫瘍化したものを神経膠腫と言います。

神経は神経そのものの細胞(神経細胞)とそれの周りを取り巻くグリア細胞(神経膠細胞)がありそれらで構成されています。

 

例えが適切かは分かりませんが鉄筋コンクリートの鉄筋が神経細胞で周りを取り囲むコンクリがグリア細胞とそのようなニュアンスです。そのうち神経膠細胞は神経という組織を構築する細胞の中で神経細胞でそのものではない細胞の総称です。つまりは神経のとりまきしている組織です。神経組織全体の90%はグリア細胞(神経膠細胞)です。その神経膠細胞が腫瘍化するとグリオーマと呼ばれます。

実は先ほど大まかに分類して説明致しましたがグリア細胞(神経膠細胞)にはいくつか種類があります。アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア細胞をまとめて神経膠細胞と呼びます。すなわちグリオーマとはグリア細胞(グリ)+腫瘍(オーマ)を掛け合わせた名前です。

 

【好発犬種は?】

どの犬種も罹患する可能性はありますが、ボクサーやボストンテリア、フレンチブルドッグに多い傾向です。

 

【種類と発生部位】

・上衣腫と脈絡叢乳頭腫・・・脳室内またはその周囲(脈絡叢乳頭腫は脈絡叢の多い各脳室が多い)

 

【どんな症状?】

通常脳腫瘍はゆっくりと進行し、

性格の変化や異常行動、てんかん様発作、旋回、意識状態の変化などが見られる割合が多い症状ですが、脳内のどこに病気ができたかで起こされる症状は変わります。それは脳は場所により担当している機能が異なるのでそこがやられた時の症状となるからです。5歳以上での発症や徐々に進んでいる神経症状、短頭種での発症は特に注意が必要です。

 

【診断】

MRI検査+脳生検

 

神経膠腫は脳実質内腫瘍であり、髄膜腫のような脳実質外性腫瘍との鑑別はMRIにてある程度可能です。髄膜からの連続性の有無は診断の一助となるでしょう。

 

【治療】

 犬の悪性グリオーマは根治的な外科切除が困難な予後不良な脳腫瘍とされています。強い浸潤性を示す腫瘍であり仮に外科手術を行っても術後の腫瘍の脳内残存が不可避であると考えます。

◯外科治療

外科を行う利点はグリオーマの治療後予後因子としての減容積および病理組織診断による診断が挙げらます。外科単独での中央生存期間は66日と報告されています。

◯放射線療法

・放射線単独

 過去の研究においてグリオーマが疑われ放射線治療を実施した犬の中央生存期間は283-430日とされていました。

 定位放射線治療(SRT)が広く普及し、低分割のプロトコルが可能になりました。

グリオーマ罹患の犬のうち、SRTプロトコル1コースを受けたMST258日、2コース以上の治療を受けた犬のMST865日(P = 0.0077 log rank, 0.0139 Wilcoxon)。またサイズが大きく線量オーバーなりそうな症例で減容積的外科が困難な場合(大きくてしかもオペが出来ないケース)は低線量多分割照射を検討する。

・放射線+化学療法

SRT1コースを受けた後、補助化学療法を受けた犬のMST658日以上で、化学療法を受けなかった犬のMST230日よりも有意に長生きした(P = 0.0414 log rank, 0.0453 Wilcoxon)と報告されております。

◯外科+放射線療法

外科に放射線療法を併用した場合の一年生存率は80%とされています。

 

 

 

【予後】

以上、犬の神経膠腫について解説しました。外科手術での完全な摘出が困難であることが多いため、他の治療法によるアプローチが試みられています。予後には注意が必要です。

グリオーマを追跡したデータの中で

・脳内転移(特に脳室に接している症例の滴下転移)

・放射線療法直後

が予後に影響を与える因子ゆえに注意を払うべき点です。

MRI T2
MRI T2
MRI T2
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MRI FLAIR
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MRI T1
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