脳圧(intracranial pressure)


脳圧は中枢性神経系疾患を扱う上で避けて通れないとても重要な要素である。
そのためどのように脳圧が上がりどのような対策を練るか、それを理解することは脳神経疾患を扱う上で大切となる。

脳圧と脳圧に影響与える因子

脳圧上昇が大脳血流に与える影響について数式に表すとこのようになる。
脳圧はCBF=MABP-ICP/CVR
・CBFは大脳血流
・MABPは平均動脈圧
・ICPは脳圧
・CVRは大脳血管抵抗
正常な神経機能は適切な大脳血流に依存している。

CVR(大脳血管抵抗:Cerebral vascular resistance)は以下の3つで調節されています。
①自己調節
 血管壁圧を介する血圧変化に反応する血管抵抗を変えることによって一定の血流を維持しようとする筋肉の反射。正常脳組織ではCPP(大脳還流圧)が50〜150mmHgの間で作動する。
②流量代謝カップリング
 大脳の代謝速度の増加はグルコースとO2消費が増加→局所組織代謝物(H+イオン、アデノシン、カリウム)の増加→大脳の細動脈拡張→CBF増加。反対に脳代謝が落ちれば→大脳の細動脈収縮→CBFと大脳血液量CBVも減少する。
③化学的調節
 さまざまな因子に影響受けるがCO2はCNS内で強力な動脈拡張作用がある。
PaCO2増加→CVR減少→CBFの増加
反対に
PaCO2低下→CVR増加→CBFの減少


動脈圧に影響する因子

全身動脈圧は心拍出量と血管抵抗(SVR)に依存
・心拍出量は一回拍出量と心拍数で決まる
・一回拍出量は前負荷と後負荷と収縮力で決まる
・前負荷は静脈還流により決まる
・後負荷は血管緊張度と末梢血管抵抗で決まる

脳圧に影響する頭蓋内の因子

CNSは骨性の構造に包まれているため容積は一定している。
正常な頭蓋内を構成している要素は
①血液
②脳脊髄液
③脳組織
である。
頭蓋内の容積が増加すると代償機能として
・組織吸収の増加と移動
・血管収縮による大脳血流量の減少
・CSFと静脈血は圧に依存して頭蓋外に出る。

それに対して病的に頭蓋内容積を増加させるもの
①軟部組織(腫瘍、膿瘍、血腫)
②水分(浮腫)
③CSFそのもの(水頭症)
④大脳血液量の増加→頭蓋内容積増加
この④を起こすものは静脈流の減少としては
→静脈由来の要素として
・頸静脈の閉塞(=静脈還流障害)
・頸部の腹側屈曲(圧迫)
・間欠的陽圧換気(IPPV)での胸腔内圧の上昇
・中心静脈圧上昇(輸液過剰や心不全による)
・呼吸停止による血中PaCO2の上昇
→動脈由来の要素として
・脳の自己調節能の低下(脳疾患や吸入麻酔)
・高血圧(MABP上がればCBF上がる)


脳圧亢進による症候とは
・頭痛、嘔吐
・傾眠(意識障害)
・乳頭浮腫
・外転神経麻痺
・落陽現象(setting Sun Sign)
・徐脈
・高血圧(急性頭蓋内圧亢進)
・CN3麻痺、瞳孔不同(散瞳側のPLRの減弱消失)
・大頭蓋症(人の乳児、小児で)
・血圧上昇+徐脈(重症で)
・除脳姿勢(重症で)
・呼吸変化
このうち意識障害、瞳孔不同と拡大側の対光反射の遅延があれば第一に占拠性病変(血腫、腫瘍、膿瘍)を考える。