急性腎不全

ARF(急性腎不全)とは急激な腎臓機能低下に伴い、体液コンディションを保てなくなり、体液量異常、高窒素血症、電解質異常、酸―塩基平衡が引き起こされ、尿毒症へと伸展し命にかかわる病態である。

 

原因

 腎前性→腎臓への血液量低下

     ・循環血液量低下(重度の脱水、嘔吐、下痢、出血、利尿剤、ネフローゼ)

     ・心拍出量低下(心不全を起こす疾患、心タンポナーゼ)

     ・その他(アジソン、敗血症、膵炎、肝不全、血管拡張剤)

 腎性→→腎実質障害による糸球体ろ過率の低下

     ・糸球体腎炎、間質性腎炎、腎盂腎炎、急性尿細管壊死

     ・感染、免疫介在性、高Ca血症、腎虚血、ショック、DIC、腎毒性物質

 腎後性→尿路閉塞による腎盂内圧↑に伴う糸球体ろ過率低下

     ・閉塞性尿路疾患(結石、腫瘍etc)、後腹膜腫瘍

     ・尿の腹膜への漏出(膀胱破裂、尿管断裂)

 

ステージングの評価


http://www.iris-kidney.com/pdf/4_ldc-revised-grading-of-acute-kidney-injury.pdf


治療

 Ⅰ静脈点滴治療 

 1:乏尿に対する治療

   ①マンニトール1g/kg(30分以上かけてIV)1日2回

   ②フロセミド(ラシックス)2~4mg/kg IV

        →効果があれば1~2mg/kg IV 1日3~4回

   ③ドパミン(イノバン注)5%グルコース液で希釈し2~4μg/kg/min CRI。ドパミン(100mg/5ml)1mlを生食500に希釈→0.2mg/5ml=200μg/5mlとなる→200μg/5ml/h=5ml/kg/h=3.3μg/kg/minとなる。この量で5ml/kg/h流せば3.3μg/kg/min入っている計算になる。

また

ドパミン(100mg/5ml)0.5mlを生食500に希釈→0.1mg/5ml=100μg/5mlとなる→100μg/5ml/hの濃度となり6ml(120μg)/kg/h=2μg/kg/minとなる。腎不全に対してこの希釈液を2μg/kg/min(6ml/kg/h)〜4μg/kg/min (12ml/kg/h)。※ 1μg/kg/min(3ml/kg/h)〜3μg/kg/min (9ml/kg/h)とする説もある。


  2:高K血症に対する治療

   ①重炭酸Na(メイロン注)0.5~2mEq/kg 15min以上かけて

        ※できたらPh7.2未満で使用

   ②レギュラーインスリン(ノボリンR注)0.1~0.5U/kg IV

         ※低血糖予防にインスリン1U:グルコース2g(50%Glu4ml)

      ③グルクロン酸Ca(カルチコール8.5%注)0.5~1ml/kg slow

  3:低K血症に対する治療

   血中K濃度(mEq/l)

    <2・・・・輸液中K濃度80mEq/l

          2~2.5・・・60

    2.6~3・・・40

    3.1~3.5・・30

    3.6~4.0・・20

    ※投与速度 0.5mEq/kg/hを超えないように

 4:胃腸障害に対する治療

  ①H2Blocker

      シメチジン(タガメット)5-10mg/kg IVorPO 1日3~4回

   ファモチジン(ガスター)0.5-2mg/kg IVorPO 1日1~2回

   ラニチジン(ザンタック)2-4㎎/kg IVorPO 1日2~3回

  ②プロトンポンプ阻害薬

   オメプラソール(オメプラップ)0.5-1㎎/kg IVorPO 1日1回(犬)

  ③胃粘膜保護薬

   スクラルファート(アルサルミン)250-1000㎎/head PO 1日3回

   水酸化アルミニウムゲル+水酸化マグネシウム30-90mg/kg PO 1日3回

  ④制吐剤

   メトクロプラミド(プリンペラン)0.2-0.5mg/kg IVorIM 1日3~4回

                   0.01-0.02mg/kg/h CRI

 Ⅱ透析療法→詳細は『高度救急医療』の項を参照ください

 Ⅲ腎置換術 

ドパミン投与量一覧